まだ制限付きとはいえ、競馬場ににぎわいが戻った2022年。大みそかは恒例のスポニチ選定「
JRA10大ニュース」で1年を振り返る。競馬の主役はサラブレッドだが、今年は多くのホースマンにもスポットが当たった。1位は、やはり惜しまれながらターフを去ったレジェンドトレーナーだ。
中央競馬歴代2位となる通算1570勝の金字塔を打ち立てた
藤沢和雄調教師が、70歳定年制により2月27日の中山競馬を最後に引退した。
77年に調教助手としてキャリアをスタート。83年から所属した野平祐二厩舎では7冠馬
シンボリルドルフの調教に携わった。87年に調教師免許を取得し、翌88年に厩舎を開業。英国修業で学んだ集団調教や馬なり調教など、当時の日本にはなかった手法を次々と導入して白星を量産。93年に44勝を挙げ、初の調教師リーディング。95〜00年の6年連続を含め、09年までに年間最多勝調教師のタイトルを12回獲得した。
数々のスターホースも育て上げた。日仏G15勝の
タイキシャトル。02、03年に
天皇賞・秋、
有馬記念を連覇した
シンボリクリスエスなどは種牡馬としても活躍。17年には
レイデオロで悲願のダービー制覇。最晩年の19〜21年には
グランアレグリアがG16勝。84年
グレード制導入以降で最多となる
JRA・G134勝をマークした。
後進ホースマンの育成にも貢献。近年では武幸師、四位師、蛯名正師などが開業前に次々と師事。レジェンドが培ったノウハウを惜しみなく伝授した。日本競馬の発展に寄与した功績は計り知れない。「馬優先主義」を掲げ、常にトップトレーナーとして君臨した34年の調教師人生。
JRA通算1500勝を記念して美浦トレセンに建造された石碑には、信念として貫いた「一勝より一生」が刻まれた。
【2位 福永が調教師試験合格】
ダービー3勝を誇る名手・
福永祐一が調教師試験に合格。来年2月いっぱいで騎手を引退し、トレーナーに転身することを発表した。「天才」と称された昭和の大騎手・福永洋一氏の長男で、96年3月2日、初騎乗から2連勝の鮮烈デビュー。
武豊以来、史上2人目となる新人50勝を達成した。99年
桜花賞を
プリモディーネで制しG1初制覇。
エイシンプレストンとのコンビで香港G13勝を挙げるなど海外でも活躍した。18年には
ワグネリアンで
日本ダービー初V。19度目の挑戦で父が獲得できなかったダービージョッキーの称号を手にした。現役3位の
JRA通算2618勝、同G134勝(30日現在)。今年も
フェブラリーS、
皐月賞とG12勝を挙げ、13年連続となる年間100勝も達成。騎手としても一流の成績を保ったままの引退を惜しむ声も多い。残り2カ月、円熟の手綱さばきを目に焼き付けたい。
【3位 女性騎手 聖奈の快進撃】
JRA10人目の女性騎手として3月にデビューした
今村聖奈(19)が快進撃。同13日の阪神8Rで初勝利。5月22日の新潟3Rで10勝目を挙げ、女性騎手のデビュー年最多勝記録を22年ぶりに更新。7月3日の
CBC賞を
テイエムスパーダで制し、史上5人目の
JRA重賞初騎乗初V。10月23日の新潟2Rで44勝目を挙げ、藤田菜七子が持っていた
JRA女性騎手の年間最多勝記録を更新。12月17日の中京5Rで、史上5人目の新人50勝。女性騎手の記録を次々と塗り替えただけでなく、ルーキーイヤーとしても驚異的な成績を収めた。28日の
ホープフルSではG1初騎乗(
スカパラダイス18着)も達成。来年はさらなる大舞台での活躍が期待される。
【4位
武豊 ダービー6勝】
レジェンド
武豊が、また新たな勲章を手にした。5月29日に行われた第89回
日本ダービーを
ドウデュースで制覇。ダービー6勝目で自身の持つ最多勝記録を更新。53歳2カ月15日での優勝はダービー最年長V。29歳で初優勝した98年
スペシャルウィークから20代、30代、40代、50代でダービーを制する快挙を成し遂げた。来年はデビュー37年目。日本競馬の至宝は、まだまだファンを魅了し続ける。
【5位 障害王者
オジュウチョウサン引退】
障害の絶対王者
オジュウチョウサンが、12月24日の
中山大障害でラストラン。最後は6着に終わったが、場内のファンから惜しみない大拍手。レース後には障害馬としては異例の引退式も行われた。
中山グランドジャンプ5連覇(16〜20年)を含むJ・G19勝。障害重賞13連勝の金字塔を打ち立てた。18年には
有馬記念にも挑戦(9着)。関連グッズが完売するなど多くのファンに愛された。
【6位
ディープインパクト産駒全世代G1】
10月22日、英ドン
カスター競馬場で行われた2歳G1フューチュリティトロフィーをアイルランドの名門A・オブライエン厩舎の
オーギュストロダンが制覇した。19年夏に急死した
ディープインパクトの最終世代のG1初制覇。同産駒は初年度から13代全てでG1制覇の偉業となった。国内で登録された最終世代の産駒は5頭で既に2頭が勝ち名乗り。来年は全世代クラシック制覇の期待が懸かる。
【7位 伊藤雄二元調教師死去】
昭和から平成にかけて活躍した名伯楽・伊藤雄二氏が8月17日、老衰のため85歳で死去した。59年に騎手デビューし、66年に調教師に転身。「水曜追い」「直前輸送」など、現在では主流となった手法をいち早く取り入れ、
JRA歴代8位の1155勝をマーク。
マックスビューティ、
ウイニングチケット、
エアグルーヴなど数々のスターホースを育て上げ、名トレーナーとして一時代を築いた。
【8位 国枝師
JRA通算1000勝】
国枝栄師(67)が、7月2日の函館10Rを
クライミングリリーで制し、
JRA通算1000勝を達成。
中央競馬史上15人目、現役では唯一の大台到達となった。調教助手を経て、90年に厩舎を開業。3冠牝馬
アパパネ、G19勝
アーモンドアイなど競馬史に残る名馬を育て上げた。関東屈指の名トレーナーだがダービーだけは8度挑戦して未勝利。来年こそは悲願達成なるか注目だ。
【9位 G1、1番人気16連敗】
本命党には受難の1年だった。
JRA平地G1は
フェブラリーSから
菊花賞まで1番人気が連敗。前年の
ホープフルSから続いた16連敗は84年
グレード制導入以降の
ワースト記録。
JRA全重賞も
京都牝馬Sまで19連敗で
ワースト記録となった。夏競馬でも
エプソムCから
小倉記念まで18連敗。師走に入り阪神JF→
朝日杯FS→
有馬記念と1番人気が3連勝で傾向は一変。来年はどうなる?
【10位 東京競馬場に国際厩舎】
東京競馬場の馬場内に新しく国際厩舎が完成。11月の
ジャパンCから運用を開始した。同レース(東京開催のG1)に出走する海外馬は到着空港から直接、競馬場への入厩が可能に。海外陣営に不評だった競馬学校での検疫の必要がなくなった。今年は欧州から4頭が来日。最新の設備を整えた厩舎は、どの陣営にも好評だった。来年の
安田記念、
ジャパンCでも世界の強豪参戦が期待される。
スポニチ