北海道・日高の家族経営の牧場が、大きな希望に包まれている。
きさらぎ賞で重賞初制覇を狙う
ノーブルライジング(牡3、美浦・
宮本博厩舎)。生産者の
スウィングフィールド牧場は19年小倉2歳Sの
ミントティー(11着)以来となる2回目の
JRA重賞チャレンジで、牡馬に限れば初挑戦となる。年々生産馬を増やし、新しい繁殖牝馬の導入にも取り組んでいる宇田昌隆代表(57)に意気込みを聞いた。
──
ノーブルライジングが生まれた時の印象は?
「よく覚えています。脚長で見栄えのする馬で、出てきた瞬間に『当たった!』と思いましたからね。馬相(顔)も良かったですし」
──成長の過程で印象に残ったことはありますか?
「1歳の9月頃までうちにいましたが、大きな病気をすることもなく、順調でしたね。ただ、(育成先の)エクワインレーシングさんに移ってから、トレッドミルに入るのをゴネるところがあったみたいで…。実は入厩してからもゲート試験になかなか受からなくて、『競走馬になれないかも…』と言われていたんです。そうなったらオーナーに本当に申し訳ないと思っていましたから、無事にデビューできて本当に良かったです」
──ここまでの3戦を振り返っていかがですか?
「デビューできて、まずはひと安心でしたが、さらに2戦目で勝ってくれて、本当に嬉しかったです。これも宮本先生や厩舎スタッフ、
国分恭介ジョッキーのおかげですね。もちろん、最終的にはオーナーが決めることですが、私としてはこのまま国分ジョッキーに乗っていただいて、いずれは大きい舞台に行ければ…。そんな夢を抱いています」
──母の
エルミラドールが牧場に来た経緯は?
「18年の繁殖馬セールで吉木伸彦オーナーと会って、『どの馬がいいでしょう?』と聞かれたので、『この馬が今回のセリで一番いいと思います』とオススメしたんです。骨盤を骨折したため未出走でしたが、
トールポピーや
アヴェンチュラ、
フサイチホウオーの全妹という血統馬ですし、お腹の中には
モーリスの子どもが入っていましたからね。すると吉木オーナーが購買されて、うちに預託していただけることになりました」
──他にも良血の繁殖牝馬を多く繋養されていますね。
「吉木オーナーが昨年の繁殖馬セールで購買された
セレブリティ(
ウオッカの妹)は、先月26日に
サンダースノー産駒の牝馬を生みました。長身の可愛い子ですよ。他にも
下河辺牧場さんと縁があって導入することができた
クールアイランド(
ノットゥルノの姉)、フランスでGIを3勝したマンデシャの妹になる
マディラストーンなど、いい馬がたくさんいます。楽しみは尽きませんね」
──まずは今週末、
ノーブルライジングが重賞初挑戦です。
「前走の1勝クラスを使う前に『ここでいい走りができれば重賞に…』とは思っていたんですが、本当に使うと聞いた時は驚きました。着順どうこうよりも
ライジングらしい、末脚を生かす競馬をしてくれれば…と思っています」
──レース当日は競馬場に?
「残念ながら、レース当日が出産予定日の馬がいるので競馬場には行けないんです。でも、吉木オーナーには『(ダービーの)5月28日だけは行きます』とお伝えしているんですよ。実際にそうなってくれれば、こんなに嬉しいことはないですね」
【
スウィングフィールド牧場】代表は宇田昌隆氏。以前は中期育成牧場だったが、14年から生産牧場に転換した。モットーは「
ナチュラルに強くたくましく」。持って生まれた特性を無理に矯正しようとすることなく、良い方向に生かす事を心がけている。主な現役馬は
ノーブルライジングの他に
ミツカネプルート(牝4、美浦・
清水英克厩舎)、
ワンライトスター(牡3、栗東・
茶木太樹厩舎)がいる。