今週は西で
チューリップ賞、東では
弥生賞ディープインパクト記念(3月5日=中山芝内2000メートル)と牝馬、牡馬ともにクラシック初戦と共通する舞台設定で
トライアルが開催される。両レースの結果を受けて、これまでおぼろげだったクラシック勢力図の全体像がハッキリと浮かび上がることになるのだろうか?
いや、すでに賞金加算に成功した馬たちは消耗を避けて、ぶっつけで本番へと向かうローテーションが定着しつつある近年の状況下では、何らかの理由でデビューが遅れたり、レースで思うような走りができずに取りこぼしがあった馬たちにとっての出走権獲得へ向けてのラストチャンスという意味合いのレースといったほうがいいのかもしれない。
そこで注目してもらいたいのが
弥生賞に出走する
セッションである。初勝利は2戦目の未勝利戦での逃げ切り。続く
若駒Sは7頭立てで3着止まり。直線の追い比べでフラつくような面を見せた競馬内容に、一線級を相手にしてはまだ詰めが甘く、決め手不足という印象を抱いた方も多いのではなかろうか。しかし、管理する
斉藤崇史調教師の見解は少し違っている。
「これまで3戦して、一戦ごとにレースぶりが良くなっていますからね。もともと調教ではすごくいい動きをする馬。調教で見せる切れ味をレースで発揮できていないのは、まだ全体的な緩さが残っている分だと思うんです。ジョッキーもそのあたりを考えたうえで競馬をしてくれてきましたし、成長を促しながら徐々に緩さが抜けてきて、いい方へと向かっているのは確かですから」
これまでの敗戦の中にも意義を見いだし、まだレースでは持っている素質=正体を現していないことに将来性も含めての期待を寄せている。
セッションの調教履歴を改めて振り返ってみると、併せ馬で先着を果たしたり、互角以上の動きを見せた相手には
バーデンヴァイラー、
ララクリスティーヌ、
ヒンドゥタイムズといった先輩のオープン馬たちがズラリと連なる。この3頭に共通するのが2月に重賞制覇を果たしていること。そんな“旬な実力馬”たちを併走相手にしても、それらをアオるほどの動きを見せてきた事実だけでも、
セッションの素質の高さは疑いようもない。
もちろん、併走相手が徐々にペースを上げて追い出しのタイミングを合わせてくれる調教とは違って、自分がつくったペースではない厳しさの中で相手をいかに不利な状況へと追い込めるかという実戦では、まだ緩さが残る分、反応が遅れる不利はより大きくなろう。これまで通りの弱みを見せる走りでは目標とする権利奪取もおぼつかなくなるが…。
「前走後は一旦、放牧に出たんですけどね。牧場での状態がすごくいいこともあって帰厩して重賞に挑戦することになりました。もともと稽古では動くタイプなんですが、やはり経験を積むごとに良くなってきたというか、成長してくれていると感じます。今の段階でも重賞で勝負になると期待しての出走です」
ならば
トライアルだけにとどまらず、その先にまで展望を広げられるような
ステップアップした走りを期待したい。
(石川吉行)
東京スポーツ