2014年から当方は宮本厩舎を担当。18年には
クリンチャー番として
凱旋門賞取材でフランスに出張したりと、いい経験をたくさんさせてもらったが、現在は担当から外れている。
「毎日のように厩舎に来てくれていたのに、急に来なくなったもんな。今、はやりの他社へ移籍したもんやと思ってたわ」
宮本調教師からギクッとするようなことを言われ、ようやく担当から外れたことを伝えたのはいつのことだったか。
しかし、厩舎スタッフにはその後もなかなか打ち明けられず、最近になってようやく報告を済ませることになったのには理由がある。皮肉にも当方が担当を外れてから宮本厩舎の成績は上昇一途。要は「疫病神扱い」されるのが怖かったのだ。
いや、そんなことはどうでもいい。当方が言いたいのは担当を外れはしても“宮本厩舎愛”は今も何ら変わっていないことなのである。
そろそろ本題に。昨秋の
菊花賞で
ボルドグフーシュが惜しくもハナ差の2着に敗れた時、宮本調教師が「神様はまだ僕にGIを取るなと…」的な名言を残したのは記憶に新しい。とにかく当方が担当していた時からGI制覇は厩舎の悲願だった。続く
有馬記念も2着。さぞかし悔しかったかと思いきや「
有馬記念2着のほうがチャンピオンズCを勝つより賞金が高いんやで」と宮本節を繰り出され、拍子抜けさせられたりもしたんだけど…。
とにかくGIトレーナーに一刻も早くなってほしい。
ボルドグフーシュの他にも、これまで
アグネスワルツ(10年
オークス3着)、
ウインフルブルーム(13年
朝日杯FS3着、14年
皐月賞3着)、
クリンチャー(17年
菊花賞2着、18年
天皇賞・春3着)、
ノーブルマーズ(18年
宝塚記念3着)とあと一歩のところまではきているだけに、そろそろ…と思っているのは当方だけではあるまい。
“もう2着はいらない”
ボルドグフーシュはGII
阪神大賞典(19日=阪神芝内3000メートル)で23年の始動となる。飛躍の一年、いやいやタイトル取りまくりの一年にしてもらわなくては。
「3歳時からこの部分がというよりは、全体的に底上げされた感じですかね。今回は福永さんから川田さんに乗り替わりになりますが、いいコミュニケーションが取れているようで、1週前追い切りに乗ってもらった時も“イメージ通りで乗りやすい”と言ってくれました」
そう笑顔を見せた河村助手は
ボルドグフーシュの課題を「体形や骨格の影響もあるのかな。ダッシュする時にトモからハミに伝わるまでにひと呼吸あって、いつも出遅れてしまう」と口にする一方で、「追い切りでも、レースでもすぐに息が入ってケロッとした感じに。本当に心臓が強い馬です」と“売り”のアピールも忘れてはいない。過去10戦で最速上がりをマークしたのは実に8回。無尽蔵のスタミナに裏打ちされた末脚こそが
ボルドグフーシュの最大の武器だ。
現役最強クラスの
イクイノックス、
ドウデュースがドバイ遠征後で不在となる次走の大舞台、
天皇賞・春(4月30日=京都芝外3200メートル)。そこで「神様がようやくGIを勝っていいと言ってくれました」と宮本調教師が号泣する姿を今から心待ちにしている身としては、前哨戦での
ボルドグフーシュの敗戦などイメージしようがない。
(栗東の幸せな英雄野郎・難波田忠雄)
東京スポーツ