現役屈指の“大穴ジョッキー”として知られる
江田照男騎手。それもそのはず、
JRA重賞通算29勝のうち、単勝2桁人気が9回もあるのだ。16頭立て16番人気の
ダイタクヤマトで逃げ切った00年の
スプリンターズS、
ネコパンチで大逃げを打ってまんまと押し切った12年の
日経賞。印象的なレースは数多くあるが、
江田照男=穴男のイメージを定着させたのは、最低人気の
テンジンショウグンで鮮やかな差し切りを決めた98年
日経賞だろう。
当時の
テンジンショウグンは単勝オッズが355.7倍、12頭立ての12番人気だった。それもそのはず、2週間前の阪神障害Sで10秒2差の9着に敗れ、これが前年の
武蔵野S11着以来、実に10カ月ぶりの平地戦だった。それ以前の平地戦でも掲示板を外してばかり。買い材料が見当たらない状況だったのだ。
しかし、
テンジンショウグンは走った。道中は後方待機…というよりも付いて回るだけという感じだったが、勝負所で外からジワッと進出。手応え良く直線に向くと、脚色が衰えることなく、残り100mで1番人気の
ローゼンカバリーをかわす。そして、そのまま先頭でゴールを駆け抜けたのだ。
3年5カ月ぶりの平地勝利で重賞初制覇。ほとんどの人が予想しなかった超伏兵の大激走に、スタンドがどよめいたことは言うまでもない。
その後、
テンジンショウグンは次走で
天皇賞(春)に挑戦するなど、檜舞台を歩んだものの、4戦連続2桁着順で引退。
日経賞の輝きを再び見せることはなかった。
一方の
江田照男騎手は51歳となった今でも現役。19年の函館ス
プリントSを
カイザーメランジェで制して以降、
JRAでは重賞勝利から遠ざかっているが、
トレードマークとなっている半袖ピンクシャツで日々の調教をつけるなど、まだまだ元気いっぱいだ。願わくはもう一度、二度と重賞で大波乱を演出してほしい。