3月25日にドバイのメイダン競馬場で開催されたドバイWCデー。26頭の日本馬が大挙参戦し、勝った3つのレースは驚きの連続だった。
UAEダービーは日本馬が1〜4着を独占。
ドバイシーマクラシックの
イクイノックスVは揺るぎないと思っていたが、逃げを打つとは予想外。帰国したルメールを取材すると「行く馬もいなかったから。自分のキャリアでも
トップレベルの馬。これ以上良くなる必要がない。それぐらい、いい」と誇らしげだった。日本最強馬として、今後もワールドツアーで世界を席巻してもらいたい。
トリを飾ったのがドバイワールドCの
ウシュバテソーロだ。ちょうど1年前には芝2000メートルの
美浦Sで6着。その後、ダートに転向して国内G12連勝にドバイまで制すのだから何が起こるか分からない。まだ、そういった原石が眠っている-。だから競馬は楽しい。
記者が注目したのは、UAEダービーを制した
デルマソトガケだ。現地取材したサウジダービー。3着に敗れたが、レース後、音無師の前向きな言葉が印象的だった。「4コーナーで前と離れ過ぎた。でも、最後は脚を使っているし、間違いなく千六よりも千八の方がいい馬ですから。もちろん、ドバイへ行きますよ」。次の挑戦につながる日本馬最先着だった。
その1カ月後に行われたUAEダービーを逃げ切ってV。2着馬に5馬身半の差をつける大楽勝だ。師は「逃げたことも向いたのかもしれないね。ただ、ハナに行くことは予想していなかった。ルメールさんには“出して行かないと進まないよ”と伝えたけど、行けたことで本来の走りができたんでしょう。あれぐらい強いんだと初めて知りました」と笑う。
ルメールもこう振り返る。「いいポジションを取りたかった。内枠からいいスタートだったので逃げた方がいいと思った。無理しないでハナを取れた。ドバイのダートはキック
バックがきついし、追い切りに乗った時、先頭でちょうど良かったから。冷静に走ってくれました」。調教でつかんだ感触、ダートの質から導き出した答えが“逃げ”の策。初コンビながら一発回答で期待に応えたのは、お見事だ。
次の
ターゲットは米クラシック。
ケンタッキーダービー(5月6日・米
チャーチルダウンズ)に挑む。UAEダービーを制した日本馬からは過去2頭が挑戦し、16年
ラニは9着、昨年の
クラウンプライドは13着に沈んだ。「今回とはメンバーが違う。ただ、サウジよりもドバイの方がアメリカのダートの質に近いと聞いています。どんな競馬でも対応していますから、能力を出せる競馬だったらいいかな、と。今度は前に行く馬も多いだろうし、あとはルメールさんがどう乗るか」。指揮官は鞍上に全てを託す。
ルメールは米クラシック参戦をどう捉えるのか。「いいかもしれない。たくさん経験しているし、スタミナもありそう。今度は2000メートル。乗りやすい馬だし、ゴールのあともまた走っていて疲れていなかった」とタフな距離もこなすと踏む。
チャーチルダウンズ競馬場は
フィットするのか。前めで運んだ馬が残る印象があるが、「去年は前に行ったけど馬が疲れた。コーナーはきついけど、速いペースだと後ろからも来る」と分析する。
「いい挑戦です。
トライしないと」。日本馬の強さを海外で示してきたルメールがこう言って力を込める。日本調教馬として初めて
ケンタッキーダービーに参戦したのが95年の
スキーキャプテン。28年がたち、19年
マスターフェンサーの6着が最高着順だ。本場アメリカのダートでどう立ち向かうのか。5月6日を楽しみに待ちたい。(デイリースポーツ・井上達也)
提供:デイリースポーツ