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「オカエリナサイ!ユタカサーン!」ファン時代の10年前に異国の地で感じた武豊の偉大さ

スポーツ報知
  • 2023年04月04日(火) 13時00分
 4月2日の大阪杯ジャックドールが鮮やかな逃げ切りでG1初制覇。手綱を執った武豊騎手にとっては、史上最年長となる54歳19日でのG1勝利というメモリアルレースになった。言うまでもなく日本競馬史に残る偉大なジョッキーだが、その人気は国内だけにとどまらない。

 2013年の10月。まだ競馬のファンだった私は凱旋門賞に出走するオルフェーヴルを追って、ロンシャン競馬場にいた。前年の勝ちに等しい2着から1年、今年こそはという熱い期待を胸に初めて訪れた“聖地”は大きな興奮に包まれていた。その中心はもちろん1番人気に支持された栗毛のスーパーホースだったが、そこはプライドの高い欧州人。心では日本トップホースの負けを望んでいたのだと思う。再び2着に敗れたレース直後は、群衆のあちこちから歓声と拍手が巻き起こっていた。

 そんな日本人にとってアウェーの中でも、キズナに騎乗する武豊騎手だけは別格だった。1994年スキーパラダイスムーンランドロンシャン賞に始まり、シーキングザパールアグネスワールドなど日本馬とのコンビも含め、それまで現地でG1を4勝。凱旋門賞の騎乗も6度目だった。私に「ユタカタケ!」と声をかけてくる人もいたが、現地での認知度は非常に高い。何より驚いたのは昼休みだ。場内ビジョンに流れてきたのは、武騎手の過去のフランスでの騎乗をまとめた専用ムービー。映画俳優の紹介のようなきらびやかな映像が終わると、実況アナウンサーの「オカエリナサイ! ユタカサーン!」という声がスタンドに響いた。このときばかりはシワの深く刻まれた老白人たちも惜しみない拍手を送っており、胸が熱くなった。

 あれから10年がたち、私は競馬記者になった。今やオルフェーヴルキズナは種牡馬として、数々の実績を築くほどの長い時間が過ぎた。それでも、いまだに武豊騎手は第一線で競馬界をリードしている。16年にはエイシンヒカリでG1のイスパーン賞を勝ち、フランスでの記録をまた1つ伸ばした。その存在感は世界でもますます大きくなっていることだろう。いつかまた、遙かロンシャンの地で偉大さに触れたいものだ。そして、その時こそ日本競馬の悲願を成し遂げて欲しい。

(角田 晨)

スポーツ報知

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