混戦の
皐月賞は…と問われて真っ先に浮かんだのが、
サニーブライアンが押し切った1997年。正確に表現すると、春の2冠が混戦と呼ばれた年だった。ただし、春が終わる頃、我々が見誤っていたことに気付かされることになる。
95、96年の2年間、クラシック戦線は、一頭の種牡馬の子供たちに席巻されていた。
サンデーサイレンス。特に
皐月賞は95年が
ジェニュイン→
タヤスツヨシ、96年が
イシノサンデー→
ロイヤルタッチと、前評判の高かった“SS”産駒のワンツーフィニッシュだった。
ところが97年はガラリと様相を変えた。上位人気に、SS産駒は4番人気の
オースミサンデーのみ。94年に3冠馬
ナリタブライアンを送り出した
ブライアンズタイムの強烈な巻き返しがみられた。
1番人気は
共同通信杯の勝ち馬で
スプリングS2着の
メジロブライト。2番人気に報知杯
弥生賞の優勝馬
ランニングゲイル、3番人気に
毎日杯2着の
ヒダカブライアンが続いたが、絶対的な主役は不在。レースは、
サニーブライアンがスタートから思い切りよく先手を奪った。道中、
テイエムキングオーに主導権を譲ったが、4コーナー手前から先頭に立ち、後続を引き離した。ゴール前、
シルクライトニング、
フジヤマビザンに、大外から
メジロブライトが強襲したが、粘り切った。
弥生賞3着、
若葉S4着と、前哨戦で地味な歩みだった
サニーブライアンだったが、勝ちっぷりは鮮やかだった。
ブライアンズタイム産駒のワンツーで、3頭のSS産駒は掲示板にすらいなかった。1〜3着馬の人気は〈11〉〈10〉〈12〉。3連単があれば…。この時点ではダービーへ向けて、
サニーブライアンの強さを理解できなかった。というよりも理解しようとしなかった。恥ずかしい限りである。(編集委員・吉田 哲也)
スポーツ報知