「
皐月賞は人気薄でもやれますからね」
1週前の取材中、
メタルスピードを管理する
斎藤誠調教師がそうつぶやいた。パッと頭に浮かんだのは2007年の
皐月賞において15番人気ながら2着に奮闘したトレーナーの管理馬
サンツェッペリン。当時は爆笑問題・田中裕二氏が「爆勝予想」で大的中させたことが大きな話題を集めたが、何を隠そう当方も▲◎○で3連単162万円馬券を射止めているのだ。
「あれは何年前だっけ? 2006、7年くらい? 開業2年目だったかな」と師も懐かしんでいたように、もう16年も前のこと。時の流れの早さを感じるとともに、それ以来、長いこと胸を張れるような
スマッシュヒットを出せていないことにもがくぜんとした。
もちろん、過去の栄光を自画自賛するために、この話を持ち出したわけではない。重要なのは「
皐月賞は人気薄でもやれますからね」という言葉の重みだ。17年にも3連単106万円超となり、翌18年も37万円超…。確かに“波乱”のにおいが強烈に漂うレースなのである。中山芝内回り2000メートルというト
リッキーな舞台設定の中で行われる成長途上で戦法もまだ固まっていない馬たちの戦い。さまざまな要素が絡み合って、平穏決着の少なさにつながっているものと推測できる。
何より
斎藤誠調教師の口からそんな言葉が飛び出したのは、今年送り出す
メタルスピードにも少なからずの手応えを感じているからこそだろう。
キャリア3〜4戦目で臨むエリートも多い中、この馬は勝ち上がりに5戦も要した。馬体がパンとせず、モタれたりと走りが安定しなかったためだが、厩舎サイドで矯正を重ねつつ、「一歩一歩階段を上がってきた」と
斎藤誠調教師。未勝利戦→1勝クラスと連勝、
スプリングS3着で権利を獲得して
皐月賞の舞台にたどり着いた。一気の
ステージアップに「感慨深いですね」と話すが、参加するだけで終わらせるつもりは毛頭ない。
「右回りではモタれたりして、なかなか力を発揮できなかったけど、そのあたりを修正しつつ、だいぶ良くなってきた。もともと、いい素材の馬だからね。前走はゲートでアオリ気味。もう一列前なら結果も違っていただろうけど、しまいはしっかり伸びてきてくれた。距離も2000メートルならもつだろうし、今年のメンバーならどれだけやれるか楽しみだね」
メタルスピードのクラシック登録は
皐月賞のみ。もしここで好結果を残せば、ダービーへは追加登録料(200万円)が必要となるが、そうなれば、それも“うれしい悲鳴”となろう。
混戦とされる
皐月賞(16日=中山芝内2000メートル)でも
メタルスピードは
サンツェッペリン(15番人気)と同じくらいの人気? 現時点での印は△だが、“16年前の再現”を視野に入れつつ、その動向を注視していこうと思っている。
(美浦の両刀野郎・山口心平)
東京スポーツ