現役時代にGIを7勝した
キタサンブラックだが、種牡馬として順風満帆だったわけではない。初年度の18年に500万円(受胎確認後)だった種付料は、19年と20年が400万円、21年が300万円と右肩下がり。種付頭数も100頭前後で伸び悩んだ。
しかし、21年に初年度産駒がデビューすると、
イクイノックスなどの活躍もあって評価が急上昇。22年は種付料が500万円にアップしたにもかかわらず、過去最多の種付頭数177頭を確保。今年は同1000万円に倍増されたが、早々と満口になっている。ここ最近の産駒の大活躍を見れば、来年の種付料が高騰するのも確実だろう。
今年の種付料が1000万円以上の種牡馬は、1800万円の
エピファネイア、1200万円の
キズナ、
コントレイル、
ロードカナロア、1000万円の
キタサンブラックの5頭。産駒がデビュー前の
コントレイルを除くと、
エピファネイアは成長力、
ロードカナロアは中長距離適性、
キズナは牡馬の大物不在という弱点がある。
その点でいえば、
キタサンブラックは実に穴の少ない種牡馬だ。芝ダートや距離は不問。現役時代の成長曲線や
イクイノックスのドバイでのパフォーマンスを見れば、古馬になってこそのイメージすらある。主戦を務めた
武豊騎手が「
キタサンブラックで
凱旋門賞に行きたかった」と口にしたのは有名な話。
英大手ブックメーカーの『bet365』は、今年の
凱旋門賞の前売りオッズで
イクイノックスを1番人気、
ソールオリエンスを5番人気タイとしているが、この2頭が日本競馬の悲願を達成する可能性は十分にある。
ここまで賛辞の言葉を並べてきたが、最後にあえて種牡馬
キタサンブラックの課題を挙げたい。それは牡馬に比べて牝馬の活躍が少ないことだ。
JRA重賞7勝中、牝馬は昨年の
アルテミスS・
ラヴェルの1勝のみ。産駒の獲得賞金ラン
キングトップ10を見ても、1位
イクイノックス、2位
ソールオリエンスに続いて3位に
コナコーストがランクインするものの、その後は10位までズラッと牡馬が並ぶ。
ただ、これは血統の特徴でもあり、父の
ブラックタイドも産駒の
JRA重賞18勝中、牝馬は1勝のみ。産駒の獲得賞金ランキングを見ても、トップ10に牝馬は2頭のみとなっている。果たして
キタサンブラックは“血の呪縛”を解き放ち、牝馬の大物を送り出せるのか。ここが真のトップサイアーになれるかどうかの分水嶺となりそうだ。