◆第167回
天皇賞・春・G1(4月30日、京都・芝3200メートル)
3コーナーの坂の下りだった。
タイトルホルダーが減速を始めた。本来なら悠然とラ
イバルたちを引き連れて、4コーナーを回ってくるはずのディフェンディングチャンピオンが直線の攻防に加わることなく、大観衆の悲鳴とともに競走を中止した。診断名は右前肢ハ行。「馬は大丈夫そうです。右が少し硬くて、下り坂でばらけたということで…」。管理する栗田調教師は言葉を選んだ。
前走の
日経賞を完勝。単勝支持率44.63%で、1・7倍と圧倒的な1番人気に支持されていた。新装された淀は名ステイヤーとして歴史に名を刻むには最高の舞台。好スタートを決め、主導権を握りに行った。大外から
アフリカンゴールドがハナを奪いに来ると、いったん2番手でレースを進めた。すべては思い描いた計画通りだった。3コーナーまでは…。
凱旋門賞、
有馬記念で失ったリズムを前哨戦で取り戻し、ファンの大声援を背に挑んだ史上6頭目となる春の盾連覇は夢と散った。
テンポイント、
ライスシャワー…。新コースになっても京都の3コーナーには“魔物”がすんでいるのか。また一頭、チャンピオンがのみ込まれた。(吉田 哲也)
スポーツ報知