今まで預託のなかった馬主さんに、新しく「自分の馬を預かってほしい」と言われること。それは厩舎が目に留まる結果を出してきたからに他ならないわけで、調教師ならびにスタッフの努力の結晶なのだと思います。
「
母ホットチャチャ」。母名ですぐにピンとくる方もいることでしょう。
菊花賞2着をはじめ、中長距離重賞戦線で活躍した
エタリオウの半弟
ジュントネフ(父
モーリス)は清水久厩舎に入厩したばかりの2歳馬です。「ジュン」の冠名で有名な河合純二オーナーの所有馬がそれまで清水久厩舎にいた記憶がなかったのでトレーナーにお聞きしてみると…。
「初めて預からせていただきますね。牧場からお話をもらったんです」
やはり新しいつながりでした。清水久厩舎といえば「
キタサンブラックを出した厩舎」として有名だと思いますが、直近でいえば現3歳世代を今までに17頭も勝ち上がらせているのも素晴らしいことだと思います。一つ勝つことの難しさは、競馬ファンの皆さまなら身に染みておわかりでしょう。とにかく「預託してもらった馬を勝ち上がらせること」への並々ならぬ情熱を感じさせてくれる厩舎なんです。
「“馬を仕上げること”は強く意識していますね。とはいえ、デビュー前にあまり追い詰め過ぎると、走ること自体が嫌になってしまう場合もありますから、難しいんですけど」(清水久調教師)
それでも坂路だけでなく、ウッドを週に2、3本走らせたりと、馬の精神状態を見ながらの調教をデビュー前にしっかりと行うのがこだわりでもあるそうです。
「負荷をかけるだけなら坂路でもできるんですが、やはりある程度、全力で走りながらコースを回ることができるようにしておくと、いざ競馬に行ってジョッキーにバトンを渡した時に、安心して乗ってもらえると思うんです」
序盤からスピードに乗って行けること。コーナーをきちんと回れること。ゴールに向けて加速していくこと。勝つために不可欠となる要素を普段から時間をかけて教えていく。どの厩舎もやっていることだと言われるかもしれませんが、そこに結果も伴っていたからこそ、きっと
ジュントネフは清水久厩舎に預けられることになったのではないでしょうか。
ちなみに
ジュントネフはまだ栗東の調教モニターだと「
母ホットチャチャ」と表示されます。「母名で表示=入厩してきたばかりの2歳馬」とすぐに分かるので、いい動きをしていると速攻でPOG候補に見つかってしまいがち。しかも彼は3日の坂路で4ハロン52.8-12.4秒をほぼ馬なりで叩き出してみせたのだからなおさらです。
乗っていた方に感触をお聞きすると「おとなしい馬だけど、走ることには前向きで、思っていた以上の時計が出ました。スピードだけじゃなくて、ラストも切れる感じ。すごくいいものを持っていそうです」と超をつけていいくらいの好感触。トレーナーも「この馬は走ると思うよ。なかなか入厩してきたばかりの2歳ができる動きじゃない」と満足げでした。
ちなみにゲート試験も一発で合格。デビューは6月の阪神か東京の開幕週の新馬戦を考えているとのこと。鞍上は岩田望騎手になるようで、5日の調教で「走りますねえ」と感心されていたそう。馬の能力ももちろんですが、“馬を仕上げる”清水久厩舎所属ということも併せて、POGでぜひ推したい一頭です。
(赤城真理子)
東京スポーツ