早いもので週末の
オークス(21日=東京芝2400メートル)、次週の
日本ダービーで「POG」を冠する当コラムは一つの
サイクルを終え、また新たな世代へとバトンタッチされることになる。一区切りへのラス前、その栄えある? 主役に指名したのが
キタウイングである。
この伏兵に関わるホースマンたちを侮るなかれ――。手綱を取る
杉原誠人は、同じミル
ファームの勝負服で昨夏の
アイビスSD(
ビリーバー)、そして
キタウイングとのコンビで今年1月の
フェアリーSを制するなど、騎手としてのキャリアをワンランク上げた。一方、管理する
小島茂之調教師といえば、手中にしたGI2勝がいずれも牝馬限定戦(2008年
秋華賞=
ブラックエンブレム、09年
エリザベス女王杯=
クィーンスプマンテ)という「牝馬の達人」である。この2人に
キタウイングの可能性について大いに語っていただいた。
まずは1週前追い切り(南ウッド6ハロン83.4-12.1秒)を終えた杉原を直撃すると…。
「1週前としては落ち着いていたし、余裕のある感じで動けていました。折り合いがついて
リラックスしている一方で、最後にはギアを上げられて、後ろから(併せ馬の相手が)来ても、しっかり反応してくれました」
過去最大のレース間隔は阪神JF(14着)時の3か月半。デビューからコンスタントに使われ、早くも8戦目を迎える相棒に…。
「前回(
桜花賞12着)も悪くはなかったんですけど、今回もいいデキ。ずっと傷みもなく、順調にきているのはすごいことですよね。新潟で(未勝利戦→
新潟2歳S連勝と)結果が出ているように左回りは走りやすいんだと思います。距離は他の馬も含めて正直、走ってみないと分からないけど、折り合いに苦労する馬ではないのは確か。それにこれまでの経験値は大きいはずですから」
杉原といえば、ヴィクトリアMに1番人気の支持を集めて出走した
スターズオンアースの1週前追いに騎乗したほか、かつて藤沢和厩舎の所属騎手として
グランアレグリアなど数々のスターホースの調教にも関わってきた。ホースマンとしての奥深さ、引き出しの多さが、今回は自身を主役に押し上げる気がしてならない。
一方、ここ一番の牝馬の仕上げに定評のある小島調教師はというと…。
「ほとんどの厩舎は“
オークスだから”と張り切って出走させると思いますが、ウチはとにかく体調を崩さないで使いたいだけ。ジョッキーも動きには満足していますし、順調なのが何よりです」
肩ひじ張らない発言が逆に不気味さを漂わせている。
「1600メートルの馬だと思っていたし、当初は
NHKマイルCを目標にするつもりだったんです。それが五大競走登録の最後になったころに、2000メートル以上でも持ちそうだなと。馬場(
NHKマイルC=稍重で施行)を考えても正解でしたね。この距離なら下手に頑張る必要はない。(出走馬の)半分くらいは(スタミナが切れて)勝手にいなくなってくれる。道中はジーッとして、残り200メートル、最後の坂で頑張れるかどうかでしょう」
身近で関わる両者の思いを背に、
キタウイングにとっての
オークスは到着地となるのか、それとも新たな出発地となるのか。その走りを興味深く見守りたい。
(立川敬太)
東京スポーツ