単勝1.4倍。04年の「第65回
オークス」は
桜花賞馬
ダンスインザムードの1強ムード。デビュー4連勝で
桜花賞制覇。
藤沢和雄厩舎の所属で、鞍上は
武豊。
オークス馬
ダンスパートナー、
菊花賞馬
ダンスインザダークの全妹とあれば、距離延長も嫌う理由にはならない。他馬は圧倒的1番人気馬にどう立ち向かうのか。
「
ダンスインザムードが強いのは分かっていた。どうやったら勝てるかいろいろ考えた」
27歳。若手から中堅へとさしかかろうとしている
福永祐一騎手のコメントだ。
「馬場はどこを通っても同じ。それなら馬の行く気に任せての先行策。逃げてもいいと思っていた。今日は最初から一発狙っていました」
その意気や良し。血気盛んに闘志を燃やして騎乗したのが6番人気、単勝21.4倍の
ダイワエルシエーロ。
桜花賞で7着に敗れて評価を落としていたが、レース前に一つの感触を得ていた。
「返し馬の感触で、これならハナに立ってもムキになることはないだろうと思った。緩い馬場も上手。
ダンスインザムードに勝つとしたら、これ(逃げ)しかないかな」
そんなふうに、ひらめきはしても、無理に行かせるのでは意味がない。レースは
ウイングレットが逃げ、
ダイワエルシエーロは積極的に前を取ったものの、まずは逃げ馬の直後で折り合いを付ける。スローで流れても引っかかることはなかった。
向正面に入って、ハナの
ウイングレットが物見をして外にヨレた。ここで瞬時の判断を下し、軽く促して先頭に立つ。それでもラップを上げすぎることなく、理想的なスローの先頭。4コーナーでは手応えを確認しながら追い出しのタイミングを図る。残り600メートルの地点から先頭の馬に11秒2、11秒4のラップを刻まれては後続もつらい。最後の50メートルは脚が上がって
スイープトウショウに詰め寄られたが、3/4馬身振り切った。1番人気の
ダンスインザムードは直線で、もたれて伸び切れず最後は
ヤマニンアラバスタにもかわされて4着に終わった。
ダイワエルシエーロは
クイーンCを末脚勝負で制していた。
桜花賞も6番手から。福永は「今回みたいなレースをすれば、みんな驚くだろうな、とは思っていましたよ」と、してやったりの笑顔を見せた。これがG1・6勝目。
オークスは父・福永洋一氏が手にしていないタイトル。「おやじが勝っていないG1を勝ちたいとかは考えたことないけど、それでも、喜んでくれると思う。今回は馬の持ち味を出す騎乗ができたし、おやじに近づけた騎乗ができたかもしれないね」
周囲が驚くような作戦と騎乗。父の姿を重ねたファンも多かったに違いない。
なお
ダイワエルシエーロが検量室に引き揚げてきた時、真っ先に駆け寄って福永と握手したのは福永の師匠・北橋修二調教師だった。「自分の馬(
マルカフローリアン6着)も頑張ってくれたけど、弟子がクラシックを勝つというのはうれしいものだよ。思い切った乗り方で上手に乗っていたよ」と満面の笑みで祝福していた。
ダイワエルシエーロの松田国英調教師は、
NHKマイルCを
キングカメハメハで制し、
オークスも勝ち、翌週がまた
キングカメハメハのダービー。「厩舎全体のムードが最高に盛り上がっています」と自信に満ちた表情で語った。3歳G1の3連勝を飾るのは、この1週間後のことだ。
スポニチ