【競馬人生劇場・平松さとし】ちょうど10年前、13年のクラシック戦線。
皐月賞(G1)前に唇をかんだのが
武豊騎手だ。
「権利を取れなかったのは痛かったです」
タッグを組んだ
キズナと共に1冠目の出走権を懸けて
弥生賞(G2)に挑んだが5着。
皐月賞への道が断たれた事で、目標を切り替えざるをえなくなった。
「早々にダービーを新たな目標として、逆算しました」と語ったのは同馬を管理していた
佐々木晶三調教師。まずは
毎日杯(G3)で賞金を加算し、
京都新聞杯(G2)も叩いて本番に臨もうと青写真を描くと、見事にこれらを連勝。
弥生賞の敗戦で閉ざされかけたクラシック戦線に、ダービーという大舞台で再び戻ってきた。
「
毎日杯を勝った事で(ダービーに)出られるようになったので、
京都新聞杯ではためられるだけ脚をためてみました。その結果、素晴らしく切れる脚を披露してくれました」と
武豊。
キズナの持ち味を一番発揮させてあげる乗り方に、天才騎手がたどり着いた。続く
日本ダービー(G1)でも同様に後方で脚をためると最後の直線で剛脚をさく裂。先に抜け出した
エピファネイアをきっちりと捉え、佐々木師をダービートレーナーに昇華させるとともに、
武豊騎手は5度目のダービー制覇を記録した。
「
弥生賞で
皐月賞の権利を取れていたら、その後のダービー出走があったのか?あったとしてもどういう結果になったのか?分かりません」
後に
武豊騎手がしみじみとそう語ったのが印象深かった。
さて、今年も
日本ダービーが今週末に迫った。例年、
皐月賞組が強い傾向にあり、今年も
ソールオリエンスをはじめとした有力馬が多数、その路線から出て来る。しかし、
キズナがそうだったように、別路線組がノーチャンスというわけではない。
キズナ同様、
京都新聞杯から臨む
サトノグランツや
毎日杯勝ちの
シーズンリッチ、また
青葉賞(G2)を制した
スキルヴィングの競馬ぶりも鮮烈だった。10年前のような名勝負が繰り広げられる事を期待したい。 (フリーライター)
スポニチ