「
日本ダービー・G1」(28日、東京)
第90回を迎える23年の
日本ダービー。これまでの節目ではセン
トライト(第10回)、
タケホープ(第40回)など、当時の競馬界を代表する名馬が世代の頂点に立っていた。当連載では過去の節目の祭典を制した優駿をフォーカスする。4回目は第80回(13年)の勝ち馬
キズナ。
◇ ◇
ダービー馬はダービー馬から-。まさにその格言通り。希代の名馬
ディープインパクトの子
キズナが、80頭目のダービー馬に輝いた。
毎日杯-
京都新聞杯を連勝して迎えた大一番。
キズナは
皐月賞上位馬を押しのけ、1番人気に支持された。最内枠からスタートしてすぐ、スッと位置を下げて道中は後方3番手。V2で確立した
スタイルを貫いた。前との差は大きくとも、
武豊は冷静沈着。慌てず、馬の力を信じて末脚をため込む。馬群を割ったのは残り300メートル。ゴール寸前で
エピファネイアを半馬身とらえた。
自身の記録を更新するダービー5勝目を手にした名手にとっても、格別な1勝だった。過去に3年連続で年間200勝を挙げた天才が10年の落馬事故以降、思うような成績を残せず、前年には過去最低の年間56勝まで落ち込むなど、かつてない苦境に立たされた。それでも、05年の
父ディープインパクト以来となるダービー制覇で、約14万人の観衆を前に「僕は帰ってきました!」と復活を宣言。ファンもこの瞬間を待っていた。
11年東日本大震災で広まった言葉である“絆”が馬名の由来。「人との絆を信じた結果、勝てた」と
武豊。デビュー2戦目まで手綱を取るも、落馬事故で戦列を離れた佐藤哲三(元騎手)、支えてくれたオーナー、調教師の思いを胸に、この日を迎えた。「
キズナとの出会いは騎手人生の分岐点」-。今でもこう語る
武豊にとって、特別なダービーだった。
提供:デイリースポーツ