高野調教師がデビュー前から
ナミュールを絶賛し続けていることは担当記者としてよく知っている。当方は毎度のように「まあ、大丈夫でしょう」と力強く推す“高野語録”にだまされ? ◎を打ち続けているわけだが…。一方で厩舎スタッフからは「
ナニワダの呪いちゃうか。フツーあんな不利受けないし…。次は
ノーマークにしてや」と言われ続けていたりもする。
前走の
ヴィクトリアマイルはまさに“
ナニワダの呪い”の真骨頂?
ソダシが内へ切り込んできた際に、鞍上の
横山武史騎手が「落馬しなくてよかった」と振り返るくらいの致命的な不利を受けたことで、まったく力を出せないまま7着に終わってしまった。
これまで獲得した重賞タイトルは昨春の
チューリップ賞のみ。前走の
ヴィクトリアマイルだけでなく、最高峰のGIではことごとく「運」に見放されてきた。
初挑戦となった阪神JFでは17番枠から1頭だけ大きく出遅れ、直線では馬場の悪い内を突くしかなくなっての小差4着。この阪神JFで賞金を加算できなかったことが翌春のクラシックにまで影響を及ぼした。
チューリップ賞経由の出走を余儀なくされた
桜花賞では馬体の細化に悩まされて10着。
オークスでは立て直しきれずに3着。さらに
秋華賞はスタート直後に僚馬
スタニングローズに内から寄られて位置取りが後ろになった分、半馬身及ばずの2着といった具合に…。間違いなくGI級の能力を秘めていることは競馬ファンの誰もが認めているのではなかろうか。
「前走に関しては全能力を出し切れなかったのは確かですからね。2歳時の
赤松賞で強い勝ち方をしているように本来、東京マイルはベストの舞台。今回こそ
ダンシングブレーヴの血が騒ぐんじゃないでしょうか。勝ったら泣いちゃいますよ」
高野調教師が
ダンシングブレーヴの話を持ち出したのは1986年
凱旋門賞の走りに魅了されたことが、この世界を志す
キッカケとなったから。
ナミュールの3代前の母で97年の
桜花賞馬でもある
キョウエイマーチの父こそが
ダンシングブレーヴ。その血を受け継ぐ血統はどうしても思い入れが深くなるそうで、だからこそデビュー前からものすごい“熱量”で
ナミュールに接し続けてきたのだろう。
「
キョウエイマーチが圧勝した
桜花賞は不良馬場でしたからね。道悪になったとしても問題ないはず。最終追い切りでは1歩目から自ら進んでいく感じで、これは心身ともに状態がいい証拠。前走から確実に調子を上げてきてますね。とにかく全能力さえ発揮できれば、ここでもやれる力量馬ですから」
「7度目の正直」でGI戴冠となれば、高野調教師の泣き顔が本当に見られる? いや、長く買い続けてきた当方としては「やっとですね」と実感のこもった声をかけ、高野師と満面の笑みで喜びを分かち合いたいものである。
(栗東の逆神返上野郎・難波田忠雄)
東京スポーツ