14頭立ての14番人気の馬が、道中最後方から、直線大外一気のゴボウ抜きで重賞を勝った。そんなのゲームの中での話でしょうと言いたくなる字面だが、事実、これは昨年の
栄冠賞のことである。実力差が定まっておらず、展開ひとつで形勢がガラリと変わるという、2歳戦の難しさを改めて感じたレースだった。
さて、この
栄冠賞は言わずと知れた出世レースで、個人的に門別2歳戦で最も楽しみなレースなのだが、今年は8頭立てと、レース史上最少頭数(門別競馬開催)となった。厩舎内での使い分けという事情もさることながら、馬の個性に合わせた、早期のデビューにこだわらない昨今の育成方針を考えれば、ある種、当然の流れかもしれない。
今年の予想で難しい点は、今シーズンから入れ替わった白砂におけるタイムの比較である。同じ馬場状態でも、日によって走破タイムにバラつきがあり、同じ物差しで測りかねる。普通は得策ではないのだが、見た目の印象を多分に含めたレース評価を、拠り所としてもいいケースだ。
個人的には、ウィナーズチャレンジで2着だった
キタサンヒコボシに注目している。厳しい展開だった先行集団の中で、唯一上位に粘っているのだから、評価できる内容だ。好位でうまくひと息入れられれば、十分にチャンスがある。もちろん、その勝ち馬
ストリームも有力だ。スピードを武器にする馬が多い中で、鋭い決め手を駆使するレース運びも光っている。3着だった
スティールマジックは、出遅れが敗因のすべてと言っていい。圧巻だったデビュー戦を見直す手はある。
ウィナーズチャレンジ組以外も侮れない馬ばかりだが、なかでも、2戦目で大きくパフォーマンスを上げた
カプセルが最右翼だ。デビュー戦は勝ち馬から1秒以上離された3着だったが、1000mは距離不足だったのだろう。前走が真の姿と考えれば、ウィナーズチャレンジ組を上回る可能性はある。
争う頭数は少なかれ、世代最初の重賞ウィナーという称号は、類稀なものである。一番星の鮮烈な煌めきを、目に焼き付けたい。
(文:競馬ブック・板垣祐介)