新企画「夏の自由研究」(随時掲載)は、函館で誘導馬を務める
クリンチャーを紹介する。
函館競馬2週目の17日、
クリンチャーが誘導馬デビューを飾った。鹿毛の重賞5勝馬がゆっくりと姿を見せると、多くのファンがその姿を収めようとカメラを向けた。
凱旋門賞に出走した馬が誘導馬になるのは史上初。注目度の高さがうかがえる。市内在住の会社員男性は「やっぱりオーラを感じますね」と、白い歯をのぞかせた。
昨年12月に引退。去勢手術を経て2月に函館競馬場にやってきた。同競馬場乗馬センターでトレーナーを務める渡辺雅也さんは「札幌と京都も手を挙げたんですけど、最近馬を回してもらってなかったので函館に来たんです」と経緯を説明。「走ってきた馬だから、全体的に体が痛そうでした」と当時を振り返る。そこから訓練を開始。朝6時半にえさを食べると、乗馬と誘導馬のトレーニングを1時間半ほど行う。「練習でもおとなしく動いているし、比較的優秀ですよ。体の
バランスがいいですね」と渡辺さん。競走成績のいい馬はうるさいことも多いが、
クリンチャーはのんびりとした性格のようだ。「トレーニングが終わると『眠いなあ』ってずっとうつらうつらしてるんです」。
一つ懸念もあった。「馬場入りすると、少しスイッチが入るところがあるんです。他の競走馬を見てイレ込まないといいですけど」と渡辺さんは心配していたが、取り越し苦労に終わった。レース当日は堂々とした姿でしんがりを務め、ファンの歓声にもイレ込むことはなかった。「こんなに落ち着いているなら、すぐに先頭誘導もいけるかもしれません」と満足そうな口ぶりだ。いずれは乗馬として馬術競技への出場も目指している。第二の“馬生”は順調な滑り出しを見せたようだ。(角田 晨)
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クリンチャー 父ディープスカイ、
母ザフェイツ(
父ブライアンズタイム)。セン9歳。北海道新冠町・平山牧場の生産。17年1月、栗東・
宮本博厩舎からデビュー。通算36戦7勝(うち地方7戦3勝、海外2戦0勝)。総獲得賞金は4億2080万4000円。主な勝ち鞍は18年
京都記念・G2、20年
みやこS・G3、21年
佐賀記念、21、22年
名古屋大賞典(以上交流G3)。17年
菊花賞2着馬で、翌18年には
武豊とのコンビで
凱旋門賞・仏G1に出走した(17着)。馬主は前田幸治氏。
スポーツ報知