先日行われたセレクトセールは大盛況だった。「
ディープインパクトや
キングカメハメハなどの大種牡馬がいなくなったことが逆にいいほうに作用して、まんべんなくいろいろな種牡馬の子が売れました」とノーザン
ファーム代表・吉田勝己氏が振り返ったように、多くの種牡馬から億超えホースが誕生。“どの種牡馬から大物が出るか分からない状況”が全体の落札額を底上げした感もあり、まさに種牡馬戦国時代といった印象だ。
そんな激しい覇権争いの1頭ともくされているのが新種牡馬
ブリックスアンドモルタル。セレクトセールでも当歳&1歳で4頭の1億円超えを記録した。一方、その初年度世代は新馬戦オープニングから2週連続勝利と幸先のいいスタートを切ったものの、その後は未勝利が続いている。存在感を再アピールするためにも、そろそろ3勝目が欲しいところだろう。
そんなタイミングでデビュー(23日=中京芝2000メートル)を迎える
ソウルアンドジャズ(牡=
母ナスノシベリウス・武井)は今年の
日本ダービーで3着に惜敗した
ハーツコンチェルト(
父ハーツクライ)の半弟。同じ武井厩舎からのデビューとなれば、兄の悔しさを弟が来年のダービーで晴らすドラマも期待される。まさに初年度の“顔”になれる血統馬だ。
もっとも、そのあたりの話題への対処は気鋭のトレーナーらしく沈着冷静。
ハーツコンチェルトを含めて5頭の兄姉すべてを管理してきた武井調教師は「父も替わって少しタイプは違いますからね」と切り出した後は「折り合い面は大丈夫だから2000メートルからデビューしますが、先々は1600メートルくらいのイメージかな。兄たちはみんな長くいい脚を使うタイプだったけど、この馬はビュッとした(切れる)脚を使いそう」。
本質的にはクラシックディスタンス(=
日本ダービー)向きではない可能性を示唆しつつも、高い資質への評価は兄姉たちと共通している。
「幼いころはダートの短距離が良さそうな体形だったのに、2歳の2月あたりから一気に馬が変わってきた。いい馬になって走りにもはじける感じが出てきたからね」
注目された1週前追い切りでは同世代相手に遅れる形にはなったものの「“動かなかったな”と思っていたら、時計(南ウッド6ハロン80.5-11.9秒)を見て納得。最後もしっかり反応できていたし、2歳のこの時期にこれだけ動ければ十分だね」とノープロブレムを強調した。
鞍上は兄
ハーツコンチェルトの主戦でもある松山。その鞍上に合わせるように中京デビューを選択した。時期こそ違えど兄は9月の中京(芝2000メートル)で8馬身差圧勝とこれ以上はない大舞台への第一歩を踏み出した。同じ尾張の地で、その背中を追うべく、
ソウルアンドジャズが初陣Vを決めてくれそうだ。
(山口心平)
東京スポーツ