メイショウシンタケを
中京記念に送り出す千田厩舎は不思議と「中京」に縁がある。開業して初めて挑んだ重賞が
中京記念(2011年小倉=
バトルバニヤン)で、初の重賞制覇が
ファルコンS(15年中京=
タガノアザガル)。
メモリアルな出来事と関わりが深い。
そのあたりの思い出を千田調教師にうかがうと「乗り役として初めての重賞も中京の
中日新聞杯(1988年)だった。ダービー3着の
ニホンピロマーチっていう馬でね。デビュー2日目に(師匠の)伊藤雄二先生が“つかまってりゃ勝てる”と言って用意してくれたんだ」。
しかし、名門厩舎が確勝を期していたはずのこの一戦は2番人気8着というほろ苦い結果に…。
「指示通り逃げ馬の後ろにつけられて“あ〜良かった”とホッとした瞬間、ドドドドドって芝のキック
バックが飛んできた。ゴーグルをするのを忘れていて…。それだけ緊張が半端じゃなかった。重賞を勝とうという人間が“怒られないように”って思いながら乗ってちゃダメなんだ。そんな気持ちでは勝てるわけがない」とジョッキーとしての心構えを学ぶ場にもなったのだとか。
そんな思い出の舞台「中京」。トレーナーはジョッキーとしての経験も踏まえ、当地のマイル戦を次のように分析する。
「引き込み線からのスタートで、向正面に合流していくまでのコース形態が独特。そこでポジションを取ろうと思ったら、ジョッキー心理としては出していきたい。内で包まれたくない馬も、外の馬も出していくので、最初のコーナーを曲がってからもある程度流れる。今はマイルのある競馬場はどれもワンターンで結構大きいけど、それに比べると一番ト
リッキーなんじゃないかな」
現在の中京は直線が長く、大箱コースの印象を持たれがち。にもかかわらず、毎年のように
中京記念が荒れるのはこうした要因もあるのだろう。
もっとも、確かな決め手が身上の
メイショウシンタケにとってペースが流れやすい舞台設定は歓迎材料。「常識にハマらないタイプで、まずは気が乗るかどうか」と千田調教師は精神面をポイントに挙げるが、裏を返せば、そこさえクリアできればチャンスは十分だ。
10番人気での差し切りで大穴をあけた前走の
米子Sから連勝を決め、サマーマイルシリーズ制覇に王手をかける――。今年の
中京記念(23日=中京芝1600メートル)で「千田厩舎の中京史」に新たな一ページを刻んでもらいたい。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ