8月13日(日)に新潟競馬場で行われる関屋記念(3歳上・GIII・芝1600m)。当地で行われる重賞競走では新潟記念に次いで歴史が古く、1966年に創設された。ところで、レース名の「関屋」とは何かご存知だろうか。これは1964年を以って廃止された旧新潟競馬場(通称：関屋競馬場)の地名にちなむ。

　旧新潟競馬場は現在のJR越後線・関屋駅の北側に位置。現在の豊栄に移転した背景には、市内を流れる信濃川が大きく関わっている。

　昭和の初め、新潟港では信濃川から運ばれてくる土砂によって水深が浅くなり、将来的に船の往来に支障をきたすことが心配されていた。また、60年代に入ると新潟市内で地盤沈下による浸水被害がたびたび発生。以上2つの点から、治水工事の必要性が唱えられるようになり、信濃川から分水路(関屋分水)を開削することが決定した。

　だが、関屋分水は長さ1.8km、川幅200m以上と非常に大規模。実に700戸近い家屋が立ち退きを余儀なくされた中で、移転候補地に挙がったのが関屋競馬場であった。戦後長らくは新潟県競馬(地方競馬)しか行われていなかったが、折しも中央競馬の再開に向けて気運も高まっていたタイミング。移転に合わせて22年ぶりに中央競馬を再開し、旧競馬場跡地には街ごと移り住んだ。

　跡地は住宅地となっており、道路形状にわずかに痕跡を残すのみだが、関屋駅の吉田方には「競馬場踏切」という踏切も存在し、この地に競馬場があった証拠が残っている。関屋記念以外にも、目黒記念や鳴尾記念、地方ではかしわ記念など、かつて競馬場があった地名を由来とするレース名は多い。

　何気なく見ているレース名の裏には地元の歴史が隠されていることもある。