「17番、
ヨカヨカだ! 捕らえるぞ!
ヨカヨカ! 差し切ってゴールイン!」
8月の夏真っ盛りになると思い出します。2021年の
北九州記念で、
ヨカヨカが九州産馬にとって高い高い壁であった
JRA重賞のタイトルをもぎ取ったあの瞬間を。コ
ロナ禍で入場制限が行われ、声を出しての応援も禁止となっていた小倉競馬場が、歓声以上の熱い感情を乗せた拍手で包み込まれました。結果的にその
北九州記念が引退レースになってしまいましたが、
ヨカヨカはそれまで北海道産馬とは大きな力差があるといわれていた九州産馬にとっての新たな道を切り開きました。そして今夏もまた新たな世代が小倉でデビューを迎えます。
3日の栗東ウッドコースでは“夢の3頭併せ”が実現しました。
ヨカヨカと同じ谷厩舎に所属する九州産2歳馬3頭のうち
アイタカ(牝=父
エイシンフラッシュ、
母ドリームアドリーム)と
ユメカナウケン(牝=父
トゥザワールド、
母ソフィアルージュ)は
ヨカヨカと同じ岡浩二オーナーの馬たち。そして
アイタカの背には
ヨカヨカの主戦でもあった
幸英明騎手の姿が。さらに
河原田菜々騎手が騎乗した
ユメカナウケンは
ヨカヨカと同じ本田土寿牧場出身。もはや本番のレースを見守るくらいのドキドキ感が押し寄せてきました。
角田大河騎手が乗る
カシノマーメイド(牝=父
ダンカーク、
母サトノコンドル)と
ユメカナウケンが先行し、それを大きく追走する形で
アイタカ。直線では
カシノマーメイド、
ユメカナウケンが併走する形になっていたところを、外から
アイタカが1頭違う手応えで抜き去って行きました。
馬場の出口で待ち構えていると、幸騎手が開口一番「走りますね!」と笑顔。その後、何やら谷調教師も交えてお話をされていたので、あとから聞いてみると…。なんとレースでは幸騎手と菜々騎手で騎乗馬を入れ替えることに。その理由は「
アイタカは稽古通りなら確実に勝てますが、まだ小柄だから初戦は減量を乗せたほうがいい。菜々ちゃんに勝たせてあげてください」と幸騎手から直々にお願いがあったのだそう。代わりに「隣で見ていて能力を感じた
ユメカナウケンは僕が頑張ります」とも。なんて素晴らしいエピソードなんだろって思っていたら、
アイタカの担当者さんは「でも“(新馬を勝った後の)
ひまわり賞は自分が乗りたいな”って」と笑ってました。つまり幸騎手は追い切りに乗られて、それだけ
アイタカの将来性に大きな期待を抱いたということなのでしょう。
アイタカ、
ユメカナウケンには岡オーナーからお届け物が。それは
ヨカヨカが
北九州記念を勝った時に着けていたのと同じ九州産馬の誇りがデザインされたメンコです。
アイタカが土曜(12日)、
ユメカナウケンは日曜(13日)の芝1200メートル九州産限定戦でデビュー予定。岡オーナーの勝負服とともに彼女らがパドックに出てきた時は、きっと
ヨカヨカのファンも沸いてくれることでしょう。
POGのコラムに九州産馬を取り上げるのはあまり一般的ではないかもしれません。けれど、
ヨカヨカを育てたこのチームだからこそ、まだ見ぬ景色が見られる気がしてペンを取らせていただきました。
(赤城真理子)
東京スポーツ