狙いすました一戦だった。99年7月の
北九州記念。
エイシンビンセンスの主戦・野元昭嘉元騎手(47)は、昇級戦で8番人気の伏兵扱いにも自信を胸にゲートに入った。「
アンブラスモア(2番人気)が逃げるのは分かっていたので、好位の内でじっとマークしておいて直線で差せればいいなと思っていた」。明確にレースイメージをつくり、勝負に出た。
想定通りに
アンブラスモアが逃げ、
エイシンビンセンスは5番手を追走。4角で早々と2番手につけてラ
イバルに照準を定めると、最速タイの上がりで1馬身差退け、愛馬を初の重賞タイトルへと導いた。デビュー19戦目だったが、うち16戦で手綱を執って特徴を知り尽くしていたからこその作戦勝ち。「ずっとコンビを組んでいたし、素直でおとなしい乗りやすい馬だったから。うまくいきました」と懐かしむ。
12年の騎手引退後、助手に転向した。今は栗東・渡辺厩舎で調教助手として、昨年の
ジャパンCを制した
ヴェラアズールなどの調教をつける充実の日々を送る。「馬とのコンタクトを大事にしている」。騎手時代からかかる馬など癖馬を調教することに定評があったが、「オープン馬でも未勝利馬でも同じ思いを持って乗るのが僕のモットー。一頭一頭、その馬に合う調教を」と志す。会心の重賞勝利から24年。仕事は変わっても、馬との向き合い方はみじんも変わっていない。(松末 守司)
スポーツ報知