「小倉2歳Sの覇者は早熟で大成しない」
これって以前は競馬界の定説にもなっていたのだが、近年は様相が明らかに変わってきた。2020年の覇者
メイケイエールは現在重賞6勝、21年の
ナムラクレアも同3勝。早熟どころか、息の長い活躍をしている真っ最中である。
小倉2歳Sは今や「出世レース」。そうなると22年の覇者が気になってはきませんか? ご記憶の方も多いことだろう。昨年の小倉2歳Sを異次元の末脚で突き抜けたのが
ロンドンプランだった。「最内枠で大出遅れ」→「上がり33秒1で差し切り」は衝撃的な勝ちっぷり。当然のごとく次走の
京王杯2歳Sでは1番人気に支持されたが…。後に右後肢第1指骨の骨折が判明する不運に見舞われ、14着惨敗を喫してしまった。
「レース後の上がり運動の時はそうでもなかったけど、栗東に帰ってきてから歩様が乱れてしまって…。伸び切れなかったのはレース中の骨折の影響だろうね」
当時は担当の久保助手も落胆の色を隠せなかったが、敗因が明確になったことで、ひたすら時がたつのを待つことに。6月末に帰厩してからは丁寧に時間をかけて調整を続け、松山が手綱を取った1週前追い切りではウッドで長めから負荷をかけて6ハロン84.0-11.0秒と脚力の違いを改めて見せつけた。しっかりと土台をつくってから調教のペースを上げていったことで、本来のキレのある動きを取り戻している。
「骨折がトラウマになって、故障した箇所をかばって走る馬も中にはいるけど、現状ではそういう面も見せていない。馬を見ていても、ただ者じゃない雰囲気を漂わせてくれているよ」
ロンドンプランの父
グレーターロンドンの母にあたる
ロンドンブリッジは、久保助手が中尾謙太郎厩舎所属時に担当していた思い入れのある血統でもある。
「
ロンドンブリッジもGIを勝てるくらいのポテンシャルを持っていた。実際、2歳時に
ファンタジーSを勝って、
桜花賞でもゴール寸前まで先頭のところを(武)ユタカの
ファレノプシスに差される惜しい2着だった。その後に故障があって…」
オークス(10着)後に左前浅屈腱炎が判明してそのまま現役引退を余儀なくされた悔しさは今でも忘れていない。思わぬ形で
ロンドンプランに巡り合ったことで、
ロンドンブリッジが成し得なかったGI制覇の夢を託せるのは、久保助手にとって「運命」なのではなかろうか。
長期休養明けになるだけに「まずは無事に」が久保助手の偽らざる本音だろうが、昨年の小倉2歳Sで見せた末脚、中間のすごみを感じさせる調教の動きから、
ロンドンプランは「早熟」どころか、「化け物」の可能性を十分に秘めている。
ロンドンブリッジの
桜花賞2着から25年――。その血を受け継ぐ
ロンドンプランのGI制覇が現実味を帯びたものになるかは、この復帰戦(
北九州記念=20日、小倉芝1200メートル)の走りにかかっている。
(小倉の都市計画野郎・難波田忠雄)
東京スポーツ