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グラスワンダー 栗毛の怪物は人気衰え知らず

スポニチ
  • 2023年08月23日(水) 05時05分
◇田井秀一のあの名馬は今(3)

 あの馬は今――。東京本社の田井秀一記者(30)が、かつてターフを沸かせた引退名馬を訪ねる全4回の連載企画「田井秀一のあの名馬は今」。第3回は98、99年の有馬記念を連覇した栗毛の怪物グラスワンダー。北海道新冠町にある、けい養先の明和牧場を訪問した。

 宿敵スペシャルウィークと死闘を演じた伝説の有馬記念から24年。グランプリ3連覇を成し遂げた怪物グラスワンダーは明和牧場で余生を過ごしています。

 ひと目でそれと分かる美しい栗毛。同牧場の浅川明彦さんは「相変わらず明るく奇麗な栗毛ですね」と陽光に輝く馬体に目を細めます。28歳になっても漂うオーラ。「食欲はそれほど落ちていませんし元気いっぱい。G1を勝つような馬は気が強いものですが、今のグラスはおとなしくて悪さもしません」と近況を教えてくれました。

 “悪さ”ではありませんが、グラスは砂浴びが大好き。浅川さんは「よく体を汚して帰ってくる」と苦笑します。取材中も何度も放牧地で寝転がって砂まみれに。伝説の名馬が無邪気に、無防備にあおむけになる姿には思わずクスリと笑ってしまいました。そんなギャップを知ることができたのも、浅川さんの日々の世話の下、グラスが長生きしてくれていたおかげです。

 グラスは3年前の春、繁殖の仕事を終えて明和牧場にやってきました。種牡馬として息長く活躍し、まだ現役産駒もちらほら。今週のキーンランドCにも直子ヴァトレニが出走します。後継スクリーンヒーローモーリスへと血をつなぎ、モーリスからはピクシーナイトジェラルディーナジャックドールと3頭のG1馬が生まれています。4代父子G1制覇はJRA史上初の快挙。「牝系で血が残ることはあっても、父系がこれだけつながることはなかなかありませんから。立派だと思います」。

 人気も衰え知らずで、功労馬へ生牧草を贈呈できるサービス「生牧草バンク」では、登録されている370頭中1番人気(8月22日現在)。届けられた牧草の累計が1トンを超えるのは、第1回で取り上げたメイショウドトウと2頭のみです。馬房にはファンから贈られてきたお守りやぬいぐるみが多数。栗毛の怪物は今も愛されています。

 余談ですが…浅川さんはスポニチで長らく地方競馬担当として腕を振るった池田元記者と大学の先輩後輩。2人は競馬仲間だったそうで、「当時はまさか自分が縁あってハイセイコーグラスワンダーの世話をするなんて思いもしなかった」と述懐します。一人の競馬ファンだった浅川さんが、ターフを沸かせた名馬の欠かせない存在に。牧人を目指している方にとっては、夢のような本当の話を最後に付け加えておきます。 (次回は30日)

 ◆グラスワンダー 父シルヴァーホーク 母アメリフローラ(母の父ダンジグ)95年2月18日生まれ 牡28歳 美浦・尾形充弘厩舎所属 馬主・半沢(有) 生産者・米国フィリップスレーシングパートナーシップ&ジョンフィリップス 戦績15戦9勝(重賞7勝) 総獲得賞金6億9164万6000円 明和牧場に来た当初は隣の放牧地のライブコンサートと「やり合っていた」が、今では仲良しに!?現在は一般見学不可。

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