「1強」ムードが漂う3歳牝馬戦線…というよりは
リバティアイランドはすでに同世代の牝馬の枠を飛び越え、
イクイノックスら最強古馬勢との対戦が待たれるほどの存在になっている。今週、来週と10/15
秋華賞トライアルが行われるが、果たして絶対女王陣営に少しでも焦りを感じさせるような馬が現れるのか…。
そんな戦況の中で行われる
紫苑S(9日=中山芝内2000メートル)は今年からGIIに昇格。一昨年の
ファインルージュ=
秋華賞2着、昨年の
スタニングローズ=
秋華賞制覇と勝ち馬がハイレベルな走りを見せ、近年は本番との結びつきがより強固なものとなっている。
そんな最重要
ステップレースの中で大いに注目したいのが
モリアーナ。折り合いを激しく欠いていた阪神JF(12着)に象徴されるように、気性の難しさもあって春はマイル路線に専念してきた馬が、秋初戦は中距離路線に足を踏み入れる。あくまで距離の壁への挑戦という試金石的な一戦になるのだろうが、陣営はクリアできる手応えを十分につかんでいる。
まずは調教内容に見られる大きな変化。「落ち着いていて力みがなく、むしろ進んで行かないくらいなんだよね。道中
リラックスしているから
ゴーサインを出したらスッと反応できる。今の感じなら2000メートルがちょうどいいのでは」と武藤調教師はメンタル面での成長を口にする。
今までは折り合いを意識するあまり、後方待機策となったり、チグハグな競馬になることも多かったが、「今なら神経質になることなく、いい位置につけられそう。(番手から抜け出した)
コスモス賞の時はポジションを取りに行ってもかからなかったし、ああいう競馬ができるんじゃないかな」と好位抜け出しをイメージしている。
この秋に距離克服へと踏み出す
キッカケとなったエピソードがある。トレーナーによると、
NHKマイルC(6着)に騎乗した横山典の第一声が「
オークスに行こうよ」だったというのだ。もちろん、中1週の強行軍となるため自重することになったが、「鞍上の感覚では1600メートルでは距離が足りないのかもしれないし、その言葉からも2000メートルはこなせていいかなと」。
何より説得力を有するベテランジョッキーの感覚とひと夏越えての成長を重ね合わせれば…。初の距離2000メートルでも「はじける
モリアーナを見せられそう」という武藤調教師の言葉は十分な現実味を帯びている。
(美浦の両刀野郎・山口心平)
東京スポーツ