「この馬には第2の
ハクサンムーンになってほしいんだ」
2歳時にこんな言葉が飛び出すほど、西園正調教師は早くから
ビッグシーザーに熱い期待を寄せていた。初戦(3着)、2戦目(2着)は惜しくも勝ち切れなかったものの、3戦目でレコード勝ちを飾ると、その後は破竹のオープン3連勝。厩舎の偉大な先輩
ハクサンムーンに勝るとも劣らない成績で、出世街道を駆け上がってきた。
それだけに前走の
葵S1番人気3着は物足りなさも…。ファンがイメージする実りの秋に向けては、もう一段の成長がカギとなろう。とはいえ記者はこの点に関して特に不安を感じていない。むしろ期待のほうが大きい。なぜなら「短距離戦線で2歳戦から活躍してきた馬=早熟」の認識は
ビッグシーザーには当てはまらないからだ。
むしろ先週の小倉2歳S4着の全弟
ビッグドリームと比べても「まだ体が緩い」(西園正調教師)。これが陣営の認識なのだから、今春までの4連勝はまだ「序章」と言っても過言ではない。そのポテンシャルに体が追いついてくれば一体、どこまで強くなるのか――。真に注目すべきは
ビッグシーザーの「これまで」より「これから」なのだ。
飛躍のカンフル剤として、この中間は坂路主体からウッド中心の追い切りにシフトした。
「もうひとつ上を求めて、長めからしっかり体全体を使って走れるように。まだ緩さは残っているけど、春に比べればだいぶ良くなってきた」
指揮官はトレーニングの効果に自信を深めながら、某競馬週刊誌の表紙を飾った
ビッグシーザーの姿にまんざらでもない表情を浮かべていた。
中身の濃いメニューを消化して迎える秋初戦の
セントウルS(10日=阪神芝内1200メートル)は、ちょうど10年前、
ハクサンムーンが
ロードカナロアを撃破する大金星を挙げた思い出の一戦でもある。
「カナロアの重賞連勝を5で止めて、改めて力を示してくれた。その
ハクサンムーンの忘れ物を取りに行きたい」
2013年
スプリンターズS、15年
高松宮記念2着と西園正厩舎の“快速特急”
ハクサンムーンがあと一歩届かなかったGIタイトル。その賜杯を手にするためにも、
ビッグシーザーにはこの伝統の一戦で最高のスタートを決めてもらいたい。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ