今年の
ローズS(17日=阪神芝外1800メートル)は春2冠の絶対女王
リバティアイランドへの挑戦権を懸けたサバ
イバルレースの様相。春の実績馬、夏の上がり馬…目移りするくらいの好メンバーが顔を揃える中、記者がイチ押しするのは矢作厩舎の良血
ラヴェルだ。
昨秋の
アルテミスSで
リバティアイランドを撃破した唯一の馬。
ラヴェルを語るうえで、この点がクローズアップされるのはもっともな話だが、それはあくまで魅力の一端に過ぎない。なぜなら半姉
ナミュール(
秋華賞2着)がひと夏越して心身とも格段の成長を果たしたように、この一族は3歳秋を迎えて本格化していく血統だからだ。
「“ひと夏越して良くなる”と聞いてはいましたが、期待以上でしたね。心身の成長がこれだけ手に取るように分かるんですから」
担当の福岡助手はこんな言葉で
ラヴェルの充実ぶりをアピールする。
「僕は馬に対して“しなやか”という言葉を使ったことは一度もありませんでした。でも今の
ラヴェルの走りには“しなやか”と感じずにはいられない。それくらい乗っていて気持ちがいいんですよね。もともとあった走りの良さ、柔らかさを残しつつ、力強さも増して芯が入ってきた。もう一段階上、いや、それ以上があるんじゃないかという状態で帰ってきてくれたんです」
福岡助手が語った心身の成長。それは言葉にするのは簡単だが、「その両方がひと夏で成長する馬はなかなかいない」。春までは周りを気にしたり、牝馬特有の時折ピリピリするところがあった馬が気性面でも子供っぽさが抜けてきたという。
「ドッシリ感が出て、細かいことを気にしなくなりました。例えるなら学生から社会人になったような感じですかね」
精神面の成長に伴い、普段の調教でも馬具に頼るところが少なくなり、「これまでの稽古ではメンコを着用していましたが、この中間は追い切りでも着けていません。そのあたりを見てもらっても、精神面の成長が伝わるんじゃないでしょうか」と福岡助手は頼もし過ぎる進化に目を細める。
「この馬の良さはまず健康であること。育成の時から一度も頓挫したことがなく、トレセンでも一回も予定を乱したことがない。そこがべースにあるので“やりながら良くなっていく”とじっくり構えながらやってこれた。今はまさに食べたものが実になってきている感じですね」
充実一途の
ラヴェルには絶対女王“逆転”の2文字が見えてくるようなパフォーマンスを期待している。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ