「そういえば、
マツリダゴッホが勝った
有馬記念(07年)って、
AJCCの叩き台だったんですよね」
今週の
オールカマー(24日、中山芝外2200メートル)で復帰する
AJCC覇者の
ノースブリッジ。当代きっての中山巧者への取材中、ふと、“あの衝撃”を思い出して
奥村武調教師に振ってみた馬券野郎だ。「ああ、そうだったね。
中山金杯はハンデ戦だし、
AJCCまで間隔が詰まっているということで、どうしよっかとみんなで考えていたんだけど、そんじゃあ、
有馬記念がローテ的にも距離的にも最適ではないかと使ってみたんだよ。それが勝ってしまうんだから競馬って分からない(苦笑)。でも、あのときのゴッホはメッチャ、具合は良かったんだ。だから厩舎全体で『もしかしたら』といった気持ちで送り出したんだよね」とは当時、国枝厩舎で研さんを積んでいた師。国枝厩舎に頻繁に足を運んでいた当方としても、さすがに「叩き台」のGIで勝ってしまうとはつゆとも思えず、レース後は悔しいやらうれしいやら、複雑な感情に包まれていた記憶が残っている。
で、今回の
ノースブリッジだが、「夏場は全休。ずっと美浦トレセンにいたけど、とりたてて暑さにこたえていた様子はなかったし、春の疲れはすっかり解消されたよ。
大阪杯? ああ、あの時は初めての関西競馬で相当ナーバスになっていた。下見所で馬を見たときに『これはダメだ』と思ったもん。馬体に張りがまったくなかった。だからあれが実力ではないし、あの経験を糧にして今後はさらに飛躍してもらいたい」と気を取り直している
奥村武師だ。
何はともあれ、今回は圧勝した
AJCCと同じ舞台。休み明けとはいえ主役の座は譲れないところだ。「それがねえ、まだ良化途上といった感じなんだよね。1週前の追い切りも絶好調とはほど遠い動き。レース当週の追い切りで岩田康に乗ってもらうので、そこでピリッとしてくれればいいんだけど…」とトーンが上がらない師だが、それは師匠の国枝調教師もあのときの
有馬記念がそうだった。叩き台なのだから強気になれないのは当たり前。水曜(20日)の追い切りで師と騎手がどんなコメントを発するか注目が集まるが、
ノースブリッジの今期の本丸は
有馬記念(のはず)。腹八分でここを勝たなければGI奪取は夢のまた夢。そんなわけで、彼らがどんなに弱気なコメントを発しても、それをうかつに信じないことに決めている馬券野郎である(現場記者にはふさわしくないのでは?)。
(美浦のひねくれ野郎・虎石晃)
東京スポーツ