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【凱旋門賞】「ごつくない牝馬」唯一の日本馬スルーセブンシーズの勝算

スポーツ報知
  • 2023年09月26日(火) 07時00分
◆第102回凱旋門賞・G1(10月1日、パリロンシャン競馬場・芝2400メートル)

 第102回凱旋門賞・G1(10月1日、パリロンシャン)に、日本から唯一、スルーセブンシーズが参戦する。日本勢4頭目となる牝馬が、世界最高峰のレースに挑む背景は―。管理する尾関知人調教師(51)=美浦=に松井中央記者が出走の経緯や勝算を聞いた。

 スルーセブンシーズが初めて重賞を制したのが今年3月の中山牝馬S凱旋門賞挑戦のプランが一気に動き出したのは、その直後だった。管理する尾関調教師が振り返る。

 「中山牝馬Sの後、間隔や条件などを踏まえ、宝塚記念に決まったが、その流れのなかでオーナーサイドから宝塚記念の結果次第にはなるが、凱旋門賞を視野に入れませんかという話をいただいた」

 現地時間の5月10日に締め切られた一次登録に名前はあった。しかし、まだ重賞を1勝したばかり。昨年はタイトルホルダードウデュースのG1馬2頭含む日本馬最多の4頭が挑み、はね返された。無謀な挑戦と思われても不思議ではなかったが、入念に計算されたものだった。

 「近年は日本でG1を勝利し、実績のある牡馬でもなかなか結果が出ないなかで、(ノーザンファーム天栄の場長)木実谷雄太さんから『凱旋門賞は、そこまでごつくない牡馬や牝馬が走っている』という話が出て、この馬に白羽の矢が立った」

 10年2着のナカヤマフェスタ、12、13年に連続2着したオルフェーヴルともに現役時代の最高馬体重は466キロと牡馬の割に大柄ではない。99年2着のエルコンドルパサーも470キロ台だ。スルーセブンシーズ宝塚記念が446キロで、これまでの最高馬体重は454キロ。ナカヤマフェスタオルフェーヴルとは同じステイゴールドの血を引くドリームジャーニー産駒という点も共通する。また、凱旋門賞は昨年のアルピニスタを始め近10年で牝馬が6勝を挙げている。

 過去を分析した結果として登録に踏み切ったスルーセブンシーズは、迎えた宝塚記念でしっかり結果も出してみせる。勝負どころで手応え良く進出するも直線で前がふさがり、進路を切り換えるロスがありながら、鋭い伸び脚でイクイノックスと首差の接戦を演じ2着と好走した。

 「直線でコース取りが厳しいところもあったなかで、最後まで前に食らいついて伸び脚もすごかったし、馬が充実しているなと感じた」

 心身の成長ぶりに手応えをつかみ、レース後も順調な回復ぶりを見せたことで凱旋門賞出走が正式に決まった。実は、尾関師は13年にキズナの帯同馬として管理するステラウインドでフランスに遠征し、フォワ賞(5着)とドラール賞(7着)に出走。それからちょうど10年で、今度は管理馬を大舞台に送り出す。

 「オルフェーヴルの2回目の凱旋門賞の時で、この馬でも負けてしまうのかと思ったが、キズナも直線で頑張って4着に好走して、壁の先が少し見えてくる感じはあった。ただ、そこからの壁がなかなか高いが、タフで最後まで頑張りきれる気持ちの強さを持っている馬が走るんだなと感じた。スルーセブンシーズは自分を持っていて気が強いタイプなので、そういう面がいい方に出ればチャンスはある」

 宝塚記念後は、しっかりとリフレッシュを図り、距離が1ハロン延びることに備えてきた。ノーザンファーム天栄での国内最終調整は今月8日と12日にウッドコースで追い切られ、12日はゴール前で仕掛けられると反応鋭く5ハロン67秒5―37秒4―11秒7の好時計をマーク。

 「少しでも心肺機能を上げて(現地に)行きたいと思い、長めに乗れるウッドコースで追い切りましたが、この馬らしい前向きさ十分の走りだった」

 今年の日本馬は1頭の参戦となった。だが、世界ランク1位のイクイノックスと接戦を演じ、充実一途を迎えた才女が、凱旋門賞で好勝負を演じる準備は着々と整っている。(松井 中央)

 ◆22年凱旋門賞 レース直前に猛烈な雨となり、馬場が悪化。G1連勝で臨んだタイトルホルダーが逃げて4角まで先頭も、欧州勢が直線で一気に上位に。5歳牝馬のアルピニスタヴァデニに半馬身差で優勝。過去最多の4頭で挑んだ日本勢は全て2ケタ着順に終わり、極悪馬場でも能力を出し切る欧州勢のタフさを、まざまざとみせつけられた。

 ◆凱旋門賞に出走した日本勢の牝馬 14年に同年桜花賞ハープスター(川田)が初めて出走し6着で日本勢最先着。20年に6歳のディアドラ(スペンサー)が挑み8着、5歳で宝塚記念を連覇したクロノジェネシスは21年に7着だった。

 ◆ルメールで3戦全勝 昨年のステイフーリッシュ(14着)に続き、2年連続13回目の凱旋門賞挑戦となるルメールは先週の中山競馬場で騎乗後、「一番大きなレースだし、フランスで生まれた僕にとっては一番勝ちたいレース」と改めて思いを語った。再びコンビを組むスルーセブンシーズとは、尾関師も「全部勝ってくれていますから」と信頼を置くように、これまで3戦3勝。「宝塚記念で僕はイクイノックスに乗っていたけど、直線で彼女の脚はすごかったし、どんどん良くなってG1レベルにあると感じた。好勝負できる能力はあるし、馬場が良ければロンシャン(競馬場)の適性もあると思う」と目を輝かせた。

スポーツ報知

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