◆第57回
スプリンターズS・G1(10月1日、中山・芝1200メートル)
デビュー7年目の富田が、厩舎解散まで1年半を切った師匠、木原調教師の管理馬で初めてG1に挑む。相棒の
テイエムスパーダには、前走の
セントウルSが初騎乗。当日は9Rを5番人気で制すと、10Rを木原厩舎の9番人気
メイショウミツヤスで勝利。続く
セントウルSを単勝112・6倍の14番人気で逃げ切って、自身初の特別3連勝で重賞初Vを決めた。
「ゲンを担ぐタイプでもないですし、特に予兆はなかったんですけどね。10Rを勝った時に、オッと思いました。みんなにも『もう一個あるんじゃないの?』みたいに言われて。緊張はなかったですけど、自分の競馬ができたらとは思いました」と振り返った。レース後は涙をこらえきれない師匠の姿が印象的だったが、本人は冷静な手綱さばきだった。
同期に
横山武史、
武藤雅、
木幡育也ら美浦の関係者の家族が多かった。富田も茨城県出身で、当初は美浦所属で話が進んでいたが、チャンスを求めて栗東を希望。「競馬学校でお世話になった先生が、木原先生と仲が良くて推してくれたのも大きいです」。当時、木原厩舎で助手をしていた武英調教師の猛プッシュもあり、所属が決まった。
師匠との一番の思い出は、
シンシティで挑んだ昨夏の
アイビスSD(2着)。逃げて逃げて残り50メートルで差され、「短い直線1000メートルが本当に長く感じました。僕の技術不足や、メンタル面もまだまだでした」。
ペプチドナイルで挑んだ、今夏の
エルムSも糧になっている。武英師にチャンスをもらい、重賞で初めて1番人気を経験。控える競馬で13着に敗れ「結果的に無理してでも行くべきでした」と後悔した。
「1番人気になることが分かっていた馬と1か月、毎日調教から携わらせてもらい、(
エルムSが)いい経験になりました。一生忘れられないレースです」と感謝。
セントウルSは内枠に速い馬が2頭いたが、強気にハナをたたき、覚悟が伝わる騎乗だった。
いよいよ大一番が迫ってきた。
ジャスパークローネとの兼ね合いがカギになるが、「今回も気分良く走らせて、自分の競馬をするだけです。師匠の厩舎の馬でG1に臨めるのは本当に光栄なことですし、楽しみです」と目を輝かせる。関わってきた全ての関係者への感謝を忘れず、今までの経験を全てぶつけ、今度は大金星をつかむ。(玉木 宏征)
◆富田 暁(とみた・あかつき)1996年12月11日、茨城県出身。26歳。2017年3月に栗東・
木原一良厩舎からデビュー。
JRA通算169勝(28日現在)。9月10日の
セントウルSで重賞初勝利。目標だった重賞を勝ち、次の目標は「また重賞を勝ちたいですし、もちろんもっとG1に乗りたいです。そのためにもっと勝ってアピールしないといけません」。166.0センチ、51.0キロ。血液型はAB。
木原調教師「二の脚は速いので、一歩目を出てほしいね」
○…師匠の木原調教師も弟子の富田と初めて挑むG1に胸を躍らせた。前走の
セントウルSでは、節目となる自身の重賞10勝目を師弟コンビで飾り大粒の涙を流した。「使ってきているので体はできている。カイバ食いも落ちていない」とトレーナー。「自分の競馬ができるかどうか。二の脚は速いので、一歩目を出てほしいね」と弟子の手腕に期待を込めた。
スポーツ報知