それぞれの夏を過ごした3歳牝馬たちが夢見るラスト1冠のGI第28回
秋華賞(京都芝内2000メートル)。だが、今年ばかりは2冠馬
リバティアイランド(中内田)の最優秀主演賞は決定事項なのかもしれない。直線一気で制した
桜花賞、ダービーをはるかに上回る走破時計で6馬身ちぎった
オークス…この強さの源は一体どこにあるのだろうか? 中内田厩舎番・石川吉行記者が明かす、これが“
リバティアイランドお嬢様”本当の素顔だ――。
“あの馬を、女王を負かさないことにはチャンスはない…”。そう、満を持して真打ち
リバティアイランドの登場だ。その蹄跡に関してはもはや語るまでもあるまい。阪神JFを皮切りに春のクラシック2冠を完全制覇、同世代の牝馬には敵なしとして挑む3冠目はもはや予定調和、その先へと続く夢舞台への
ステップに過ぎないというのが一般的な評価となろうか。
ただ、京都の内回り二千という設定は、展開ひとつで結果がガラリと変わってしまうことでも知られている。もしも
リバティアイランドが唯一、敗戦を喫した
アルテミスSのように窮屈な位置に入って仕掛けが遅れるようなこと、
桜花賞のようにゲートからの進みが悪く後方まで位置を下げてしまっては、鬼脚をもってしても前を残してしまう恐れはないだろうか。
さらに言えばひと夏を越した
リバティアイランドは現在、どのように調整が進められているのか。“楽に勝てるGIなんてない”と伝え聞こえる言葉とともに、その近況は誰もが知りたい部分である。
「帰厩後の雰囲気は以前と変わらず、すごくいいですよ。若干はどっしりとした感じですかね。周りにつられて暴れたりするようなこともなく、自分のペースで歩けたりするところは精神面の成長。いくぶんは大人になったというところなんでしょうね」と、その様子を伝えてくれたのが担当する松崎助手。デビュー前から
リバティアイランドに寄り添い、その素顔を最もよく知る人物だ。
「体重は帰厩時(9月12日)で511キロ。そこから2週間ほど調整してからの計量で497キロ。レースは
オークス(466キロ)からプラス20キロくらいでの出走になるかもしれませんね。そんなに大きくなったという感じはないんですけどね。成長したといえば全体的にボリュームが出て馬体に張りが出たというか、もちろんこれはいい感じにという意味ですけど、もともとあれだけレベルの高い走りをしてくれているんですから、さらに成長を求めたり鍛え直すっていうのもどうかと思うんですよ。もともとすぐにシュッとする体というか、レースに向けて自分で体をつくってくれるタイプでもあります。とにかく無事に息と体調さえ整えておけば、レースではしっかり走ってくれると思います」と松崎助手。
リバティアイランドの競走馬としての資質の高さに全幅の信頼を寄せている。
もともとカイ食いは細く、トレセン在厩時はなかなか体を増やすことができなかっただけに、夏の休養で馬体を増やせたことをプラスに考えており、大幅プラス体重で太めに映る割に調教が軽過ぎるという周囲の声も、1週前のジョッキー騎乗の追い切りでシャットアウト。調整に抜かりはない。
「初めて入厩した時は普通にいい馬だな、というくらいに見ていたんですよ。でもジョッキー(川田)は最初から違うと見抜いていましたね。デビュー前の追い切りに初めて乗った時には『この馬、普通じゃないですよ。ちょっとモノが違います』って。トモの張り、筋肉の触り心地…どこがというより、全てにおいてレベルが高いんでしょうね。レースに行けばいつもしっかり走ってくれる。我は強くても自分を持っている感じ。体を触られるのが嫌で蹴りを入れてこようとしてみたりするのに、顔をなでられるのは好きみたいでもっと触ってよ、と求めてくるような。そんなしぐさを見てると癒やされたりもします。何よりジョッキーと馬が信頼関係を築けてくれていることが心強いです」(松崎助手)
才媛のもとに集ったチームはお互いを信頼しあうことで一丸となり、ここまでの道のりを歩んできたことを明かしてくれた。その行く末には果てしない希望が待ち受けていることを予感せずにはいられない。
(栗東のお嬢様ラブ野郎・石川吉行)
東京スポーツ