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しばしば耳にする「心房細動」 発症率や“その後”の競走能力への影響考える

  • 2023年10月12日(木) 11時30分
 今月9日、京都競馬場で行われた京都大賞典(3歳上・GII・芝2400m)において、2番人気のブローザホーン(牡4、美浦・中野栄治厩舎)が最後の直線コースで競走を中止。レース後、同馬は心房細動を発症していたことがJRAより発表された。

 しばしば耳にする「心房細動」という言葉。JRAのホームページ内にある競馬用語辞典によれば、「心臓に異常な電気信号が起こり、心房が規則正しいリズムを失う不整脈の一種」とのこと。発症すると全身に血液を上手く送り出せなくなるため急激に失速し、今回のブローザホーン同様に競走中止に至るケースもある。ただ、全く異常のない競走馬が突如として発症し、特に治療を行わなくても治癒することがほとんどだという。

 競走馬や競馬に関する研究を行う「JRA競走馬総合研究所」が、88年〜97年間の10年間に渡り調査した結果(=『サラブレッドのスポーツ科学』第47回・第48回より引用)によると、同期間に出走した延べ404,090頭中115頭(123例)が心房細動を発症。実頭数は39,302頭なので、頭数あたりの発症率は0.29%となる。

 状況別では「4歳以上」「芝のレース」「長距離戦」で発生率は上昇。また、再発した馬は115頭中7頭で、確率に直すと6.1%だった。ただし、上記の結果はレースで大きく遅れた馬(芝では1着から5秒、ダートでは同4秒)を対象に調査しており、レース後半に発症して小差で入線した場合や、数分で拍動リズムが復帰した馬は含まない。そのため、実際にはいずれの数値よりも若干多いものと考えられる。

 発症しても“その後”の競走能力に影響は無いのだろうか。昨年9月のオールカマーで発症し13着に敗れたソーヴァリアントは、同レースから約2カ月後のチャレンジCを勝利。ステイフーリッシュも21年8月の札幌記念で発症して競走中止したが、その後も安定した走りを続け、22年春にはレッドシーターフHとドバイGCを連勝している。必ずしも全馬が同じというわけでは無いだろうが、やはり一過性のものと判断して良さそうだ。

 今回は重賞の上位人気馬で競走中止があったため、改めて「心房細動」について改めて考えた。発生起因などは未だに未知の部分が多く、今後の研究や進歩によって原因が究明、発生が抑止されることを願いたい。今週から秋のGI戦線が本格的にスタートし、年末の有馬記念ホープフルSに向けてますます盛り上がり見せる日本競馬。まずは「無事之名馬」で全馬完走、そして厩舎へと帰ってほしいものだ。

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