「悪い馬場が得意とは思っていなかったし、3歳馬が(強豪古馬相手に)通用するとも…。まして1週間ちょっと(入厩10日)での競馬。走り過ぎというか、こっちがビックリした。能力ですべてをこなしたとしか言いようがないよな」
昆調教師は
トップナイフの前走を本音で振り返ってくれた。今年の
札幌記念は
ジャックドール、
シャフリヤール、
ウインマリリンのGI馬3頭に加え、
プログノーシス、
ダノンベルーガ、
ヒシイグアスなど超豪華メンバーが顔を揃えたうえに、道悪馬場で底力を問われるタフな競馬となった。
そんな中、
トップナイフは中団追走から徐々に内めを進出して、4角手前で早くも先頭に立つ真っ向勝負を展開。最終的には次週の
天皇賞(秋)でも人気を集めるであろう
プログノーシスには4馬身もの差をつけられたものの、3着には3馬身のリードを保つ堂々たる2着に食い込んでみせた。
冒頭通り、決して得手ではないはずの道悪馬場、そして芝コースでの追い切りわずか2本で臨んでの結果なのだから、
菊花賞(22日=京都芝外3000メートル)へ向けて昆調教師が自信を深めたのは言うまでもない。
「
セントライト記念や
神戸新聞杯は使いたくなかった。レース間隔を十分に取って、レースまでゆったり、余裕をもって調整させたかったからね」
昆調教師は直行の意図をこう説明した通り、この中間は5日、12日にウッドで7ハロンからしっかりと時計を出せた。
トライアル出走組よりも中身の濃い調教を課せているのは大きなアドバンテージとなろうか。
しかも今年の東西
トライアルは、
セントライト記念が2分11秒4の高速決着、
神戸新聞杯に至っては2分23秒5のレコードが記録された。多少なりとも、その反動が気になる中、それぞれ中4週、中3週とレース間隔が詰まっていては思い切った調整ができないのもまた確かだろう。
「春はローテーションがきつかった。
皐月賞(7着)、
日本ダービー(14着)のデキに比べれば今回のほうがはるかにいいよ。大事に育てていけば…と思いながらここまでやってきて、(横山)典さんは“欠点がなくなった”と言ってくれている。どんな競馬もできる乗りやすい馬なので、距離は3000メートルでも」
振り返れば、昨年暮れの大一番・
ホープフルS(2着)では意表を突く逃げ。そして前走の
札幌記念では道中で早めに動いての粘り込み。全馬が未知な舞台では、
トップナイフの変幻自在な機動性こそが最後にものをいうのでは。そう思っているのは記者だけではあるまい。
(栗東の超一流の技術野郎・難波田忠雄)
東京スポーツ