名手・
武豊をして「1週前の時点で(
ドウデュースの状態に)気になるところはない。それくらいでなければ、勝ち負けできないメンバー」と言わしめるほど豪華布陣が顔を揃えた秋の盾(
天皇賞(秋)、29日=東京芝2000メートル)。「世界最強」の
イクイノックスを筆頭とした超一流どころを脅かすには、その仕上がりは「順調」レベル程度では足りない。求められるのは100点のさらに上を行く「上昇度」。そんな高いハードルを超える勢いで急上昇しているのが、昨年4着のリベンジに燃える
ジャックドールだ。
「動きだけで言うなら全然、違う。昨年よりも明らかにいいですよ。1週前の感じでは
大阪杯以上。文句なしの状態です」
管理する藤岡調教師が進軍ラッパを鳴らすのには訳がある。今年の
大阪杯を制し、初のGIタイトルを手にした
ジャックドール。絶妙なペース配分でレースを支配し、後続の追撃を完封した、その競馬ぶりは王者と呼ぶにふさわしいものだったが…。
「早めに栗東に戻してやってきたが、なかなか状態が上がらず苦労した」とレース後、指揮官は臨戦過程は決して順風満帆なものではなかったことを明らかにした。その理由は走りの
バランス。調整役の仲田助手は当時をこう証言する。
「もともとは
バランスのいい馬なんだけど、一時期それが崩れていた。
大阪杯の前が一番そういう状態で…。ハミに頼ってという感じで角馬場では前が浮きやすかったし、坂路に行ったり、馬場で乗ったりするとハミにぶら下がってくる。そのあたりを修正しながらの立ち上げでした」
対してこの中間の調整はどうだ。「放牧帰りの状態が良く、全体の
バランスも取れてる。その分、調整も順調で心配するところは何もないですね」とは藤岡調教師。待望の
ビッグタイトルを獲得した
大阪杯以上と言えるスタート地点からピッチを上げている。昨年のリベンジへ向けて、これ以上の心強い材料があるだろうか。
12日に坂路4ハロン51.7-11.9秒と抜群の切れで大差先着を決めれば、18日にはコンビ再結成の藤岡佑を背にウッド6ハロン81.1-11.1秒と猛進。これに今週のひと追いでもう一段のプラス
アルファが加われば、一体どこまで上昇カーブを描くことになるのか…。
昨年の
天皇賞(秋)は
パンサラッサが大逃げで後続を引き離す特殊な競馬になったが、今年のメンバーには何が何でもハナへ…という馬は見当たらない。「展開は昨年より楽になる」とニヤリと笑みを浮かべた藤岡調教師の視線の先には栄光のゴールがハッキリと映っているようだった。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ