◆第168回
天皇賞・秋・G1(東京・芝2000メートル、良)
第168回
天皇賞・秋は29日、東京競馬場で行われ、単勝1・3倍の断然人気に支持された
イクイノックスが、後続に2馬身半差をつけ、
JRAレコードでG15連勝を決めた。管理する
木村哲也調教師(50)=美浦=は「キツかった」と重圧の苦しさを明かし、世界ランキング1位の最強馬から、最高のパフォーマンスを引き出した。
引き揚げてきた愛馬を迎え入れながら、木村調教師は「スーパープレッシャー」と苦笑いを浮かべた。世界ランキング1位の
イクイノックスを管理する重圧。レース後、「本当は言わないほうがいいんだろうけど」と前置きしながら、「正直キツいですよ」と率直な気持ちを吐露した。ただ、同時に余りある喜びにも包まれている。「キツいはずなのに、どうにもこうにも幸せなんですよね。朝焼けの中とかで幸せを感じるんです。この感覚を味わえているのは、現在の調教師では自分だけだと思います」と充実した表情で語った。
宝塚記念以来の休み明け初戦となった
天皇賞・秋へ、厩舎スタッフが一丸となって完璧な状態に仕上げた。「トップのG1レースで両陛下もご来場なさる中で、恥ずかしい仕事をするわけにはいかない。そういう一念でやってきました」。それが見事に実を結んだ記憶にも記録にも残るレコードVだった。木村師は会見中、この日早朝の出来事を自ら切り出した。「美浦で調教していたら日の出と同時に虹が出ていたんですよね。あんな虹、見たことないですよ」。晴れ晴れとした気持ちで決戦の場へ向かい、レースの時を迎えていた。
単勝1・3倍の支持に応えた圧倒的な強さに、数多くの名馬を生産してきたノーザン
ファームの吉田勝己代表も「時計を見て驚きました」とレコードだけでなく前後半のラップに言及。従来のレコードを記録した11年は前半5ハロン56秒5―後半同59秒6だったが、57秒7―57秒5で加速する流れを抜け出した。「恐ろしいです。常識から外れています」と興奮気味だった。
シルクレーシングの米本昌史代表は「言葉がいい意味で出ないというか、馬の成長に驚いたレースでした。よくケアしてもらって、無事に
ジャパンCに向かってほしいと強く願っております」と力を込めた。待ち構えるのは、今年の牝馬3冠
リバティアイランド。トレーナーが「天才」と呼ぶ最強馬は、再び伝説を見せてくれることだろう。(角田 晨)
◆
イクイノックス 父
キタサンブラック、
母シャトーブランシュ(
父キングヘイロー)。美浦・
木村哲也厩舎所属の牡4歳。北海道安平町・ノーザン
ファームの生産。通算9戦7勝(うち海外1戦1勝)。総獲得賞金は17億1158万2100円(うち海外4億5889万100円)。主な勝ち鞍は東京スポーツ杯2歳S・G2(21年)、
天皇賞・秋・G1、
有馬記念・G1(以上22年)、ドバイ・シーマクラシック・G1、
宝塚記念・G1(以上23年)。馬主は(有)シルクレーシング。
スポーツ報知