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ケガと戦い続けてきた熊沢重文騎手 平地&障害G1制覇は想像を絶する困難を乗り越えた大記録

スポーツ報知
  • 2023年10月30日(月) 16時25分
 引退と聞いて、一時代が終わる思いだ。「ろっ骨が2、3本折れたなんて、骨折のうちに入らない。馬に乗るうえで関係ないよ」。以前、そう熊沢重文騎手は調教後に笑っていたが、聞いていた私は背筋がゾゾゾーッと寒くなった。普通の人なら耐えられない、眠ることもできないような痛みだろう。そんなケガに何度も打ち勝って障害、平地の二刀流として活躍。不屈の闘志で昭和、平成、令和と馬に乗り続け、「鉄人」と呼ばれ続けてきた。

 アッと驚くダイユウサクで、1991年の有馬記念を14番人気でV。今でも単勝1万3790円での勝利は、有馬記念の勝ち馬の単勝最高配当記録として光り輝いている。そして「乗ることができて幸せだった。僕にとっての財産」と話すステイゴールドJRA名馬列伝のポスターは熊沢騎手がまたがり、「愛さずにいられない」のキャッチコピーで、ファンの記憶に刻まれてきた。

 そんな熊沢さんで私が最高の名場面と思うのが、マーベラスカイザーでの2012年の中山大障害V。平地と障害G1両方を勝った初めてのジョッキーになった。何度も言っていた「一番達成したかった記録」を成し遂げ、翌週に栗東トレセンで本当にうれしそうにしていたのを思い出す。

 その大記録について3年ほど前に言っていたのが、「今の子は、そんなバカなものを目指さない。俺は普通じゃないから、その記録を目指したんだよ」。常に危険と隣り合わせで、バカみたいに大変な道のりを乗り越えたからこそ出た言葉だろう。謙遜し、微笑みながら自身の大記録を振り返った熊沢さんは本当にカッコ良かった。

 昨年2月の落馬負傷で痛めた頸椎(けいつい)の状態を考慮しての決断。後輩たちには「あまり偉そうなことは言えないけど、馬に乗るというのはすごく楽しい仕事なので、頑張って乗り続けてほしいです」とエール。障害ジョッキーをはじめ、多くの後輩から慕われ、熱心にけいこをつけていた姿を思い出す。騎手として38年間、本当に長い間、お疲れ様でした。(中央競馬担当・内尾 篤嗣)

スポーツ報知

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