現地時間4日(土)に
オーストラリアのローズヒルガーデンズ競馬場で行われるザ・
ゴールデンイーグル(南半球産:4歳・北半球産:3歳、芝1500m)に
オオバンブルマイ(牡3、栗東・
吉村圭司厩舎)が日本馬として初参戦。同レースは1着賞金525万豪ドル(日本円で約5億円、1豪ドル=96円換算)で、総賞金1000万豪ドル(日本円で約9億5000万円)という破格の賞金を誇るものの、まだ日本のファンになじみは薄い。果たしてどんなレースなのか、現地在住で日本馬の海外遠征をサポートする川上鉱介氏に話を聞いた。
「このレースは日本馬にとって本当に狙い目です」と川上氏は力を込める。
オーストラリア競馬といえば、06年に
デルタブルースが制した
メルボルンCや、19年に
リスグラシューが勝った
コックスプレートなどが有名。19年新設と歴史の浅いザ・
ゴールデンイーグルは「賞金の高さが最大の魅力ですが、その金額に見合ったレベルの馬が出走してこない」と語る。
理由として挙げるのが南半球産の4歳馬(日本の3歳馬)限定競走という特殊な条件。種牡馬ビジネスが盛んな同国では能力の高い牡馬は3歳で引退してしまう。そこで高額賞金を設定し、「その流れを止めて、長く競馬に使ってもらえるようにという側面があります」。ただ種牡入りで生まれる利益と、競馬を続けることによる様々なリスクを天秤にかけると、まだまだ現役続行する馬が少ないのが現状だという。
さらに同レースには、豪州の競馬を統括する2つの機関による政治的思惑も絡む。「シドニー地区を統括するRNSW(レーシングニューサウスウェールズ)と
メルボルン地区を統括するRV(レーシングヴィクトリア)によって、どちらが競馬の中心かを争っています」。
これまで豪州における秋には、RNSWによる「シドニー・カーニバル」。春はRVによる「
メルボルンス
プリングレーシングカーニバル」と棲み分けていた状態が、ザ・
ゴールデンイーグルを施行するRNSWによって春の主役を奪いにきているのだという。「気候的にも春の方が競馬に向いており、一方で秋のシドニーは重馬場になりやすく、有力馬を集めにくい状態でした」。そのほか、RNSWは馬券の控除率が高く、その分を賞金に還元しやすい仕組みとなっている。
ただ賞金が高い訳ではない。ザ・
ゴールデンイーグルはチャリティーレースとして、主催者が認可した複数の団体の中から馬主が選んだ団体へ賞金の10%が自動的に募金。団体は引退競走馬支援から人間のがん研究まで多岐にわたる。このように広く世間にも受け入れやすい仕組みが取り入れられているのも、
オーストラリア競馬の特徴と言えよう。
レースが行われるローズヒルガーデンズ競馬場といえば、15年に
リアルインパクトがジョージライダーSを制すなど、過去に日本馬も好走。「
オーストラリアの競馬場は欧州の馬場のように深くはないので、日本馬も走りやすいと思います」と強調する。11月3日時点で海外ブックメーカーのオッズでは4番人気。当初予定していた
武豊騎手は10月29日の負傷により乗り替わりとなってしまったものの、
オーストラリアで日本馬が新たな歴史をつくることを期待したい。発走は日本時間4日(土)の14時45分。
◆川上鉱介(かわかみ・こうすけ)
競走馬シンジケート会社「Rising Sun Syndicate」代表取締役。2001年に渡豪し、20年まで障害騎手として現地で活躍。騎手時代に豪州の通訳・翻訳の国家資格を取得し、現在は海外遠征コーディネーターとして日本馬の遠征や日本人騎手の現地サポートを行う。22年には自身の著書「南半球で馬主になる―
オーストラリアに夢をのせて」を刊行した。