「ここで満足に浸ってばかりはいられません。この後が悩みどころなんです。
ジャパンCに行くか、それとも
エリザベス女王杯に行くか…」
秋初戦の
府中牝馬Sから4日後、黒岩調教師はこう心中を語った。何の話かというと、厩舎の看板馬
ルージュエヴァイユの「
ロードマップ」の話である。
振り返れば、
オークスで騎乗した池添も、そのポテンシャルの高さに舌を巻いていた。口向きに難を抱え、まともに走れなくても6着まで押し上げた走りは紛れもなくGIレベル。今年初戦の
愛知杯(12着)、立て直しを挟んでのメイS(10着)こそ振るわなかったが、続く牡馬相手の
エプソムC、さらには休養を挟んだ前走で2着に健闘。再び軌道に乗ってきた。
「いやあ〜先生、驚きましたよ。出遅れたうえに、3〜4コーナーで大外をブン回して最後まで伸び切りましたから。とんでもない脚力ですね」といったこちらの振りに対して、「はい。やはり素晴らしい馬なんです。なんとか勲章を取らせてあげなければ…と思っているんですけどね」と師が返答した後に続いたのが冒頭の弁である。
要するに、敷居は高くても得意中の得意の東京で行われる
ジャパンCで着取りを狙うか、
エリザベス女王杯(12日=京都芝外2200メートル)であくまでGI取りを目指すのか…。そういった悩ましい選択を陣営は迫られたわけである。
当方が仮に
ルージュエヴァイユの一口を持っていれば、絶対的に
ジャパンCを使ってほしいと願う。選択の余地はない。
イクイノックスや
リバティアイランドがいるだけに勝ち負けまでは厳しいかもしれないが、舞台が東京なら万全の状態で臨める可能性は高く、そしてまた掲示板に入れる可能性も決して低くはない。言わずもがな、
ジャパンCの賞金は高い。4着で7500万円、5着でも5000万円だ。
一方、
エリザベス女王杯では2着でも5200万円。勝てる見込みがあるなら
エリザベス女王杯でOKだが、負けることが前提なら
ジャパンCのほうがはるかに見返りが大きくなる可能性は高いのだ。そんなわけで
ルージュエヴァイユの進路に熱視線を注いでいたところ…。
「文句ない動きを見せてくれましたね。ここにきて体に芯が入ってきましたし、道中のコントロールもバッチリ。前走から心身ともにかなり良くなっています。距離もこなせる範囲なので、うまく末脚を引き出せれば」と1週前追い切り後に
エリザベス女王杯への参戦を決意表明したトレーナー。陣営は勝負に出た(=勝てる見込みがあると判断した)とみていいだろう。
とはいえ、重賞未勝利の関東馬だけに人気はそれほど集まるまい。つまり、馬券的には非常に魅惑的に映る
ルージュエヴァイユなのである。
(美浦の馬券野郎・虎石晃)
東京スポーツ