◆第48回
エリザベス女王杯・G1(11月12日、京都・芝2200メートル=良)
第48回
エリザベス女王杯は12日、京都競馬場で行われ、単勝1番人気の3歳馬、
ブレイディヴェーグが危なげなくG1初制覇。キャリア5戦目での“古馬G1”勝利は、世界ランク1位の
イクイノックスと並ぶ最少記録となった。管理する
宮田敬介調教師(43)=美浦=も開業4年目で初のG1獲得。ルメールは
菊花賞(
ドゥレッツァ)から
JRA・G1を3連続勝利となった。
まさにエンジンが違った。
ブレイディヴェーグは、直線に向くと迫力満点のフットワークでグングン加速。残り100メートルで逃げる
アートハウスをとらえると、右手前のまま一気にゴールに飛び込んだ。検量室前に引き揚げてきたルメールは「シャー」と静かに喜びをかみ締め、愛馬の肩を何度もたたいてねぎらった。「ホントにうれしい。まだ伸びしろがある。絶対G1レベル」と声を弾ませた。
陣営が危惧していた通り、ジャンプスタートして出遅れた。名手は「1番枠は嫌でした。いつも通りダメでした」と振り返ったが、「スピードがあるからリカバリーできました」と慌てることなく好位に。道中は
ハーパーの後ろにピタリ。牝馬3冠戦線でコンビを組み、勝負どころで下がってくるような馬でないことも見抜いており「いいポジションでした」。後方から差し届かず2着に終わった前走の
ローズSと同じ轍(てつ)は踏まず「今回は3番手で同じぐらい脚を使ってくれて、すぐ抜けることができた」と、
イクイノックスと並ぶキャリア5戦目での古馬G1制覇を成し遂げた。
ローズSで同世代による
秋華賞の優先出走権を獲得も、軽い骨折を2度経験しているため状態を考えて自重。能力を信じ、古馬との対戦を選択しただけに、宮田調教師はレース後「ちょっと喉が痛いぐらい叫ばせていただきました。正直、2着も3着も分からないぐらい、無我夢中でした」。普段は冷静だが、開業4年目でのG1初制覇に喜びを爆発させた。
ルメールは
菊花賞、
天皇賞・秋に続く今秋
JRA・G1・3連勝の快進撃。改めて
ブレイディヴェーグの強さを問われ「瞬発力ですね。瞬発力があるから(今後も)たくさん勝てる」と即答した。宮田調教師も「メイチの仕上げでしたので、おそらく少し休ませることになるのかなと思います」と話す一方で「ポテンシャル的には男馬相手でも。今からワクワクしています」と期待を隠さなかった。(玉木 宏征)
宮田調教師、二人の師匠と悲願の初戴冠
宮田調教師には二人の師匠がいる。一人は助手として仕えた国枝調教師で、厩舎の柔和な雰囲気づくり、馬に寄り添って仕上げていく姿勢など、学んだことは多い。もう一人は開業前の技術調教師時代に研修させたもらった名伯楽の
藤沢和雄元調教師で、宮田師は「自分の中の常識、
セオリーを藤沢先生にぶっ壊された」と話したことがある。
名伯楽の流儀の一つに、速い時計を出す追い切りでも馬なり主体というものがあった。「あれは何がすごいかって、追い切りと普段の調教の抑揚を少なくしていたのだと思います。普段で中身をしっかりつくり、(追い切りで)追い込んでいきすぎないように」と手本にしながら開業から自らの厩舎の大切な
スタイルとして定着させてきた。
変則の3日間開催の追い切り日についてもそうだ。藤沢和師に質問すると「普段しっかり乗っていれば、何曜日が追い切り、レースだって考えなくていい」と意外な答えが返ってきたという。今回の栄冠の陰には常識にとらわれず挑む姿勢があったのは間違いない。(坂本 達洋)
ブレイディヴェーグ&ルメール記録メモ
▽キャリア5戦目の古馬G1勝利 22年
天皇賞・秋の
イクイノックスに続く2例目。6戦目のVは
ファインモーション(02年
エリザベス女王杯)、
リアルインパクト(11年
安田記念)、
フィエールマン(19年
天皇賞・春)、
クリソベリル(19年チャンピオンズC)、
レイパパレ(21年
大阪杯)、
エフフォーリア(21年
天皇賞・秋)、
イクイノックス(22年
有馬記念)の7例がある。
▽3歳馬の
エリザベス女王杯V 3歳以上となった96年以降では02年
ファインモーション、03年
アドマイヤグルーヴ、06年
フサイチパンドラ、07年
ダイワスカーレット、08年
リトルアマポーラ、10年
スノーフェアリー、13年
メイショウマンボ、17年の
モズカッチャンに続く9勝目。
▽
JRA重賞初勝利が
エリザベス女王杯 96年以降、97年
エリモシック、06年
フサイチパンドラ、09年
クィーンスプマンテ、10年
スノーフェアリー、12年
レインボーダリア、14年
ラキシス、15年
マリアライト、21年
アカイイトに続く9度目。
▽
JRA平地G1騎乗機会3連勝 ルメールは
菊花賞(
ドゥレッツァ)、
天皇賞・秋(
イクイノックス)に続く勝利。同騎手は18年(
秋華賞、
菊花賞、
天皇賞・秋、
JBCスプリント※京都開催)と20年(
天皇賞・秋、
エリザベス女王杯、
マイルCS、
ジャパンC)に2度、史上最多の4連勝を記録している。
◆
ブレイディヴェーグ 父
ロードカナロア、
母インナーアージ(
父ディープインパクト)。美浦・
宮田敬介厩舎所属の牝3歳。北海道安平町・ノーザン
ファームの生産。通算5戦3勝。総獲得賞金は1億7079万8000円。重賞初勝利。馬主は(有)サンデーレーシング。
スポーツ報知