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マイルCS・G1」(19日、京都)
“代打騎乗”に導かれ、唯一の牝馬
ナミュールが待望のG1初制覇を成し遂げた。当初、騎乗予定だったムーアがこの日の京都2Rで落馬負傷。急きょ、藤岡康太騎手(35)=栗東・フリー=が手綱を取り殊勲星。藤岡康は09年NHKマイルC(
ジョーカプチーノ)以来、14年ぶりとなるG12勝目をつかみ取った。
“代打騎乗”で大仕事をやってのけた。ムーアの落馬負傷で、急きょ騎乗を託された藤岡康が、
ナミュールにG1初制覇をもたらした。4コーナー最後方から外を突き抜け、豪快な追い込みV。ウイニングランでファンに迎えられると、高々と右手を掲げた。「これだけの馬ですから、レースはずっと見ていて知っていました。期待に応えられて良かった。すごい声援を頂きましたし、うれしかった」と難易度の高いミッションをクリアして会心の笑みを浮かべた。
この日の2Rでムーアが落馬。騎乗依頼があったのは昼休みだった。一瞬は重圧を感じたが、「チャンスのある馬」と気持ちを奮い立たせた。短時間で特徴を頭に入れ、ためれば必ず切れると、自信を持って臨んだ。出遅れても慌てることなく、リズムを優先。追いだしをギリギリまで待ち、直線半ばでできた1頭分のスペースを割って、上がり3F最速となる33秒0の末脚を引き出した。
8度目のG1挑戦での悲願成就に、高野師は感情を爆発させた。「本当に心の底からうれしい」。21年の阪神JFで1番人気に推されながら4着敗退。それ以降、「いつかG1を獲る馬」と自分自身に重圧をかけてきた。あふれ出る涙を拭い、馬場へと飛び出て人馬を迎えた。「同じキャロットクラブの先輩
リスグラシューのようになってほしい」。次走は未定だが、この勝利を契機に距離延長を見据える。
殊勲の藤岡康にとっては、09年のNHKマイルC以来、G12勝目。「若い時にG1を勝たせていただいたが、その後はG1の重みを感じていました」と勝利をかみしめる。
空白期間は長くとも、腐ることはなかった。「日々の積み重ねを大事に。頑張ってきて良かった」。14年の間に所帯を持ち、今年6月には男児が誕生したばかり。「もちろん、頑張らないといけないと思いました。これから帰って、子どもをお風呂に入れます」と言い残して競馬場を後にした。守るものができたことが攻める勇気を与え、価値あるG12勝目をつかんだ。
提供:デイリースポーツ