◇馬
チェラー 驚異の日本レコードを刻んだ天覧競馬の感動がよみがえる。「第43回
ジャパンC」(26日、東京)に
イクイノックスが最多タイ記録となるG1・6連勝を懸けて出走する。前線記者が推したい馬の魅力をアピールするG1ウイークの水曜企画「馬(バ)
チェラー」。今週はベテラン梅崎晴光(61)が、女性ファンの一途(いちず)な愛馬心の軌跡をたどりながら、天皇陛下の称賛も受けた最強ホースの蹄跡に迫る。
“アイヌの父”と呼ばれるジョン・
バチェラー宣教師が札幌にアイヌ民族の教育機関「
バチェラー学園」を設立した1922年。同地から110キロ離れた新冠御料牧場に当時の皇太子殿下(後の昭和天皇)が行啓された。放牧の様子を視察された後にアイヌ競馬を手を打って観戦。「この日が一番愉快であった」(天皇賞の世紀=05年競馬ブック所収)と感激されたという。
それから1世紀を経た今秋の天覧競馬。東京競馬場で天皇賞を観戦された天皇陛下は
イクイノックスのウイニングランに立ち上がって拍手を送り、「凄いレースでしたね」と感動されたという。レース後には優勝馬関係者との対面を希望され、ファンイ
ベントを終えたルメールが陛下の元へ駆けつけた。
今月2日に赤坂御苑で開かれた「秋の園遊会」でも、招待者の岡部幸雄元騎手らに、陛下は天皇賞の感動を自ら語られたという。1分55秒2という驚異的なレコードでの秋の盾連覇はそれほど衝撃的だった。
「ドバイで勝ってスターになったけど、これで世界のスーパースターになりました」。
天皇賞・秋のレース後、場内スピーカーから流れてくるルメールの言葉を聞きながら、
イクイノックスに一途の愛を貫く女性ファンも目を潤ませていた。
同馬の一口会員でもある
ジャズトランペッターの市原ひかり。恋する
バチェラーが出走する日は自身のライブスケジュールを空けて観戦。パドックからレース終了まで望遠レンズを向け続ける。「あの子が変わったのはダービーの惜敗から。馬場から引き揚げる際に
ドウデュースのウイニングランを悔しそうに見つめているんです。ルメールさんと一緒に、じっと立ち止まって」。
惜敗を糧にダービー以後はG1・5連勝。「馬にはレースを勝つ動機がないっていうけど、彼はまれにみる勝ちたがり。もう負けないぞと自分で決めているみたい」。天皇賞で味わった感激のお礼に直筆の
イクイノックスのイラストを木村厩舎へ贈ったという。
3月のドバイ遠征時は前年の
有馬記念の疲労が抜けず食欲不振に陥った。「
宝塚記念も疲れが残っていたのか、ゴール後にすぐ止まってしまいました。それでも勝つなんてけなげで可愛くて」。天皇賞の口取りでは不機嫌そうに尻っぱねをした。「昨秋の天皇賞ではおとなしかったのに…」。疲れてご機嫌ななめの彼が心配になったが、すぐ思い直した。つらい時が成長する時だよ。天皇陛下も感動されたいとしの
バチェラー。再び衝撃の走りを見せる。
◇市原 ひかり 1982年(昭57)生まれ、東京都出身。05年、洗足音楽大
ジャズコースを首席で卒業。同年、ポニーキャニオンから
デビューアルバム「一番の幸せ」をリリース。
ジャズだけでなく竹内まりや、山下達郎らのアルバムにもソロ
プレーヤーとして参加。父は
ジャズドラマーの市原康氏。シルクホースクラブで
イクイノックスの他に
アロマデローサ(牝3)、
メテオリート(同)、
カンティアーモ(牝2)の愛馬会員になっている。
スポニチ