日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の鈴木悠貴(32)が担当する。10月8日に
JRA産駒最多勝記録を塗り替えた
ディープインパクト。種牡馬としての“英雄”の凄さについて、社台スタリオン
ステーションの徳武英介場長に話を聞いた。
10月8日の京都4Rを
ロックユー(セン5=中内田)が制し、産駒
JRA通算2750勝。
ディープインパクトは
父サンデーサイレンスの産駒最多勝記録を更新した。11年連続のリーディングサイアー、全世代での産駒重賞V、牡牝3冠馬を生むなど、種牡馬としても輝かしい実績を残してきた“英雄”が、その歴史に新たな1ページを刻んだ。
「本当に凄い数字ですね」と喜ぶのは、ディープがおよそ12年半過ごした社台スタリオン
ステーションの徳武英介場長。「父のサンデーは日本競馬の礎をつくった。いわば先駆者と言えます。そして、ディープはその血を受け継いで日本競馬を発展させた。比べることはできなくて、ともに凄い馬です。この親子が日本競馬を繁栄させたと考えると感慨深いですね」。
無敗3冠、通算14戦12勝。突出した現役成績を引っ提げて、07年から種牡馬生活をスタートした
ディープインパクト。初年度産駒からいきなり、
マルセリーナ(11年
桜花賞)、
リアルインパクト(同年
安田記念)とG1馬が誕生。いずれもマイル戦での戴冠だった。「どんなタイプが出るのだろうと思っていたら、
リアルインパクトが
安田記念を制した。その後も短い距離に対応できる馬が多く出てきた。スピード能力が高い種牡馬だと感じましたね」。
2年目以降も、その高いスピード能力が生きるマイル戦で好成績を挙げる。ただ、活躍はそこだけにとどまらなかった。「サンデーもそうでしたが、母の質を下げないですよね。それどころかその質を高める。だから、広範囲に活躍馬が出た。総合力が高い馬が多いですよね」。その言葉通り、中〜長距離戦での大舞台でも頂点に立った。
産駒活躍の要因は能力面だけじゃない。「何よりサンデーの産駒の中では上品だった。本当に父の子かなと思うくらい(笑い)。欧州系の母方の上品な遺伝子を受け継いでいたんでしょうね」と徳武場長。「真面目で聡明(そうめい)な感じ。就活でうまくいくようなタイプですよね」と笑う。
残念ながら19年夏に急死し、現3歳が産駒最終世代。今後の注目は後継種牡馬だ。「ディープの子たちも母の血が色濃く出る馬が多いですね。どれが抜け出ていくか楽しみですし、欧州でもディープ系の種牡馬が増えそうですよね」。現在、国内のディープ系種牡馬は約40頭。その中で特に期待が大きいのは、父と同じ牡馬3冠に輝いた
コントレイルだ。今年の当歳セレクトセールでは、母
コンヴィクション2の牡馬が5億2000万円(税抜き)で落札されるなど“億超え”連発。再来年デビューの初年度産駒に早くも熱視線が注がれている。「
コントレイルは楽しみですね。天下を取ってほしいです」。今もなお競馬の発展に貢献し続ける
ディープインパクト。父の父としても大きな“衝撃”を与えてくれそうだ。
◇鈴木 悠貴(すずき・ゆうき)1991年(平3)4月17日生まれ、埼玉県出身の32歳。千葉大法経学部卒。14年にスポニチ入社。今年1月から競馬担当。
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