希代の逃げ馬がターフを去る。昨年3月の
ドバイターフと今年2月の
サウジカップを制した
パンサラッサ(牡6=矢作、父
ロードカナロア)の引退が決まった。28日、矢作師が発表した。今後は北海道新ひだか町の
アロースタッドで種牡馬入り。26日の
ジャパンカップ12着がラストランとなった。引退式を行う方向で調整が進められている。
矢作師は「レース後も問題はありませんが、最初から年内で引退と考えていたし、いい引き際なのかなと。欲を言えば、きりがないですからね。(
パンサラッサには)本当に勉強させられました。馬というのは分からない。
コントレイル(20年クラシック3冠制覇などG1・5勝)と同じ世代で素質は全く違うと思っていたのに、ここまでの馬になるとは想像もしていなかったです」とコメントした。
21年
福島記念で重賞初制覇。翌年の
中山記念で重賞2勝目を飾り、続く
ドバイターフが同着による歓喜の海外G1初V。
吉田豊とデットーリが表彰式で壇上に並ぶシーンが胸を打った。
ハイライトは3走前の
サウジカップ。身上の逃げで日本調教馬として初めてこのレースを制した。世界最高額の優勝賞金1000万ドルをゲット。当時のレートで約13億円のV
マネーがクローズアップされた。そこから転戦した
ドバイワールドカップは10着に敗れ、帰国後に右前繋靱帯(けいじんたい)炎を発症。予定していた夏の英遠征を断念し、
ジャパンカップが8カ月ぶりの実戦だった。
きっぷのいい逃げが持ち味で、ラストランの
ジャパンカップは前半1000メートル通過がレース史上最速の57秒6。他馬を大きく引き離し、スタンドを沸かせた。レース後、SNSでは勝った
イクイノックスに次ぐトレンド入り。矢作師は「ファンの多い馬だったし、自分にとっても個性的な逃げ馬をつくりたいとの思いを持っていました。つくろうと思っても、つくれるものではない。それは彼の資質だったと思います。心に残る馬でしたね。終わりだと思うと、グッと来るものがあります」と心境を明かした。
通算27戦7勝(うち重賞4勝)、獲得賞金18億4466万3200円は
イクイノックス、
アーモンドアイ、
キタサンブラックに次ぐ歴代4位。みちのくからサウジアラビアで頂点へ。ビッグな
サクセスストーリーがファンの心を揺さぶった。
スポニチ