24年目のリベンジなるか――。今年のリーディングサイアー1位、2位を占める「父ミスタープロ
スペクター系」は00年の初出走以来、
有馬記念で未勝利。いったいなぜか。過去の出走を振り返り、種牡馬勢力図が一変した
エポックメーキングな年に「初V」があるかを検証しよう。
有馬記念における父ミスプロ系の歴史を振り返ってみよう。同系の産駒で最初に
有馬記念に登場したのが00年の
アメリカンボス(
父キングマンボ)で6着。同馬はダート1800メートルで未勝利勝ち、芝1200メートルの準オープンで3着と万能性を示しつつ99、00年
エプソムC連覇の実績。とはいえ00年秋競馬はさっぱりの戦績で、
有馬記念も単勝万馬券のブービー15番人気。先行して勝ち馬
テイエムオペラオーから0秒6差の6着だった。翌01年は
アメリカジョッキークラブカップと
中山記念を連勝。その後また6戦連続の着外で
有馬記念は13頭立てのシンガリ13番人気。この結果をご存じの方も多いだろう。先行策を打ってしぶとく運び、
マンハッタンカフェにはかわされたものの、逃げた
トゥザヴィクトリーを捉えて2着。馬連4万8650円は3連単どころか馬単もない当時では想定外の大穴だった。
この後、10年代以降の日本のミスプロ系は、
キングカメハメハの登場によって枝葉が広がっていく。有馬でみたび穴をあけた
トゥザグローリーと
トゥザワールドの兄弟。
ルーラーシップ、
ラブリーデイといった
キングカメハメハ直子が勝てないまでも奮闘。他に
キングマンボ系の持ち込みキングズベスト産駒
エイシンフラッシュが10〜12年に出走して7、2、4着。
18年は
レイデオロが、19年は
アーモンドアイが1番人気で出走したが、前者は
ブラストワンピースを捉え切れず、後者は生涯で唯一馬券圏内を外すことになる9着。このあたりから、ミスプロ系が勝てないことが毎年、
有馬記念の血統トピックとして取り上げられるようになった。
それはともかく、勝てない理由だ。
レイデオロと
アーモンドアイ、ここに
エイシンフラッシュを入れてもいいが、この3頭はいずれもベストパフォーマンスが東京競馬場。個々で見れば中山適性で及ばなかったとみたい。他に人気で勝てなかった馬に12年
ルーラーシップ(2番人気3着)。この馬は出遅れが…。あと15年
ラブリーデイ、18年
キセキ(いずれも2番人気5着)もいるが、この2頭は競馬場を問わない万能性と継戦能力の高さゆえ、秋4走目の有馬出走だった。連戦の疲れでパフォーマンスを落としていたことは否定しづらい。
つまり、これまでの敗因を全てつぶせる存在が望ましい。中山競馬場への適性が一定以上あり、余力があって、出遅れなどの極端な癖がない父ミスプロ系の人気馬がいれば、チャンスはあるはずだ。(仙波広雄)
○...ミスタープロ
スペクター 1970年1月28日、米国ケンタッキー生まれ。父レイズア
ネイティブ、
母ゴールドディガー(母の父ナシュア) 現役時代は14戦7勝、重賞未勝利。75年クレイボーン
ファームで種牡馬入り。活躍馬を多数出したほか、「種牡馬の父」としても後継が多くいる大種牡馬。世を去る29歳のその年まで種付けをこなしたタフガイ。
スポニチ