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【追憶の有馬記念】04年ゼンノロブロイ カリスマ調教師が初めて口取りに加わった日

スポニチ
  • 2023年12月20日(水) 06時45分
 04年の有馬記念は記録ずくめだった。ゼンノロブロイが逃げるタップダンスシチーを楽にかわして快勝。勝ち時計2分29秒5は今も残るレコード。ゼンノロブロイは同年天皇賞・秋ジャパンC、有馬記念の「秋G13連勝」を達成し、藤沢和雄師は02、03年のシンボリクリスエスに続く、有馬記念3連勝を決めた。

 しかし、藤沢和厩舎担当記者にとって、そんな数々の記録を全て吹き飛ばす珍事が、レース後の口取りで起こった。藤沢和師が口取りの列に笑顔で加わったのだ。

 師はどんなビッグレースを勝っても、口取りの時は馬から遠く離れ、管理馬の様子を眺めるだけだった。「口取りで褒められるべきは、お馬さん。だから自分は参加しない。参加する時は自分が納得いく仕事ができた時じゃないかな」と指揮官は話してきた。

 「初めて口取りに加わりましたね」と聞いた。師は照れくさそうに「今まで一番うれしかったからね」と理由を明かした。

 記者の脳裏に浮かんだのは、ちょうど1年前の有馬記念のレース後だった。日がとっぷりと暮れた頃に優勝馬シンボリクリスエスの馬房を訪ねると、藤沢和師がいた。正確に言えば、3着馬ゼンノロブロイの馬房の前にいて、ずっとロブロイに話しかけていた。

 「最後の最後にリンカーンにかわされてたじゃないか。ちょっとショックだぞ。こんなレースじゃ、(この有馬記念をもって)引退するクリスエスを戻さなきゃならないじゃないか。鍛え直しだぞ、おい、聞いているのか」。

 全ての光景が一本の線となった。1年前の有馬記念3着から、師とロブロイは1年後のこの快勝に向け、鍛え上げてきたのだ。見事に結果を出し、師はしっかりと仕事ができたのだと納得し、口取りに加わったのだった。口取りの列の隅で笑顔を見せる藤沢和師。あの風景は一生忘れない。

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