競馬(に限らずレース全般)において最も面白い、興味深いのは“3強対決”ではないか。
レース中の駆け引きという点で考えたい。“1強”では、ある1頭をラ
イバル全頭が倒しにかかるという、一方的な方向の駆け引きしかない。“2強”では、その2頭による駆け引きのみだ。
これが“3強”になると、急に駆け引きの種類が増える。まずはA対B、A対C、B対Cの3通り。勝ち馬AがCを退けた後、Bをさらに倒すパターンもあるだろう。レース中の勝負どころが一気に増える。
前置きが長くなったが、オールドファンに“思い出の3強決戦”を聞けば必ず出てくるのが、この00年ラジオたんぱ杯3歳Sだ。
まずは
アグネスタキオン。同年のダービー馬
アグネスフライトの全弟だ。デビュー戦を3馬身半差つけて圧勝していた。
そして
ジャングルポケット。札幌チャンプで、その札幌3歳Sでは、のちに東スポ杯3歳Sを制し、朝日杯3歳S2着の
タガノテイオー、同じくのちに阪神3歳牝馬Sを制した
テイエムオーシャンを下していた。
もう1頭は
クロフネ。デビュー前から評判を集めた外国産馬で、前走・
エリカ賞を3馬身半差つけて一方的に勝っていた。
3頭の単勝オッズは
クロフネが1.4倍、
アグネスタキオンが4.5倍、
ジャングルポケットが4.8倍。4番人気馬は23.4倍と離れ、誰もが3頭の競馬で間違いないと思っていた。
前述した“駆け引き”を制したのは
アグネスタキオンの
河内洋騎手(現調教師)だった。道中、5番手付近で並ぶ
クロフネと
ジャングルポケットを背後からマークした。
4角手前。3頭の中で先に動いたのは
松永幹夫騎手(現調教師)騎乗の
クロフネ。すかさず
アグネスタキオンも外から迫った。
角田晃一騎手(現調教師)騎乗の
ジャングルポケットは内で詰まり、そこから
アグネスタキオンを懸命に追いかけようとしたが、
エーピーウィザードに外から来られ、1手遅れた。
直線を向いて先頭に立とうとする
クロフネ。そこに外から襲いかかった
アグネスタキオン。あっという間に抜き去って突き放す。懸命に踏ん張る
クロフネ。遅ればせながら脚を伸ばす
ジャングルポケット。最後はやはり3頭の競馬となったが、
アグネスタキオンが2着
ジャングルポケットに2馬身半差をつけてゴールに飛び込んだ。
ご存じの通り、
アグネスタキオンはその後、無傷の4連勝で
皐月賞馬へと上り詰め、その
アグネスタキオン不在のダービーは
ジャングルポケットが快勝。
クロフネは
NHKマイルCを制した後、ダートに転じて
ジャパンCダートを圧勝し、ファンを驚かせた。3頭は種牡馬としても成功を収めた。
3強対決の前から、クラシックへの登竜門と呼ばれ始めていたこのレース。この3頭の決戦によって、一気にレースの格が上がった。そこから中山に場所を移してのG2昇格、そしてついにG1
ホープフルS誕生と、レースそのものが異例の出世を遂げた。3頭の功績は非常に大きかった。
スポニチ