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ラストライドの田中勝春騎手、有終2勝でカッチースマイル全開も…「やっぱりグッときちゃうよね」最後の最後ファンの声援に涙

スポーツ報知
  • 2023年12月29日(金) 06時35分
 調教師試験に合格した田中勝春騎手(52)=美浦・フリー=の引退式が28日、全レース終了後に中山競馬場で行われた。現役最後の騎乗では2勝を挙げ、引退式でも明るい“カッチースマイル”を振りまいたが、最後の最後に涙。武豊を始め多くの仲間やファンから送られてステッキを置いた名ジョッキーを、30年近い親交がある小島太元調教師(76)が惜別の「見た」。

 引退式のスタートから満面の「カッチースマイル」全開だった田中勝の目から涙がこぼれたのは、盟友の柴田善と抱擁した時と、最後にパドックを1周してファンの声援に応えた時だった。「やっぱりグッときちゃうよね。52歳、オールドルーキー。みなさんに喜んでもらえるような馬を育てていきたい」と調教師転身の決意を口にした。

 12R終了後の寒空のなかで行われたにもかかわらず、大勢のファンが居残り、騎手仲間、家族などたくさんの人が別れを惜しんだ。日本騎手クラブの会長として花束を贈呈した武豊は、「勝春の騎乗センスはずっとうらやましかった。本当です」と最大級の賛辞を贈った。

 騎手最後の日だった28日は6鞍に騎乗し、いきなり1、2Rを連勝。ただ、前日に早く寝すぎて零時過ぎに目が覚めてしまい、「寝不足気味でボーッとしながら1レースを迎えてました」と驚きの裏話を披露して、観衆の笑いをさそった。

 この日、引退式で着用した勝負服は、公私で世話になり、すでに亡くなった二人のオーナーの勝負服をあしらったものだった。「天国で酒でも飲みながら、これを見てくれていたらいいなと思ってね」。ファンだけではなく、すべての競馬関係者からも愛された男は、惜しまれながら35年間の騎手人生に別れを告げた。(西山 智昭)

 小島太さん「優しい性格や、今時では珍しいくらい義理人情を大事にしているところが、愛されている理由なのだろう」

 ジョッキーになり立ての頃からカワイイ顔をしていて、馬を御すのが達者だった。話をしてみたら子供の時から馬が好きで、勝手に馬に乗ったり触ったりしていた、と。同じ北海道から出てきて、似たような幼少期を過ごしていて…。自然と親近感を覚えて、もう30年以上、長いつきあいになったなあ。

 思い出すのはサクラプレジデントのダービーだな。新馬戦から乗ってもらって朝日杯FS皐月賞ともに2着。厩舎として、何より勝春に勝ってほしいと、03年のダービーは力が入っていた。少しスタートに不安なところがあった。だから、雨が降っていたけどカッパを羽織って自分でゲート裏まで誘導したんだ。

 「『ヨシッ!』って聞こえたよ」。あとから勝春に指摘されたんだけど、ゲートを五分に出て無意識に鞍上に届くくらい大声が出ていたんだね。今になっては良い思い出だ。結果は7着だったが、やれるだけのことはやったので心残りはない。

 今でも家族で会いに来てくれたりと、私にとっては本当にありがたい存在。騎手としてもっと大成する技術はあったが、人の良さというか、他人を蹴落としてでもという部分には欠けていたかもしれない。ただ、そういう優しい性格や、今時では珍しいくらい義理人情を大事にしているところが、「カッチー」と愛されている理由なのだろう。

 間違いなく、彼は本物のホースマンだ。きっとトレーナーとしても活躍してくれるだろう。(スポーツ報知評論家)

 ◆田中 勝春(たなか・かつはる)1971年2月25日。北海道生まれ。52歳。89年3月に騎手免許を取得し、同年10月21日に初勝利。90年の京王杯オータムハンデ(オラトリオ)で重賞初制覇。92年安田記念(ヤマニンゼファー)でG1初勝利を飾った。JRA通算2万657戦に騎乗し、歴代12位の1812勝。G1・2勝を含む重賞51勝。

 ◆小島 太(こじま・ふとし)1947年4月11日、北海道生まれ。76歳。66年に騎手デビュー。2度の日本ダービー制覇など通算1024勝。調教師としてはイーグルカフェマンハッタンカフェでG1を制し、通算476勝。騎手と調教師を合わせて通算1500勝を達成した。趣味は大相撲観戦。

スポーツ報知

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