「第38回
根岸S」が28日、東京競馬場で行われ、1番人気に支持された
エンペラーワケア(牡4)が圧倒的な強さを見せつけて重賞初挑戦V。また京都競馬場の「第29回
シルクロードS」は、2番人気
ルガル(牡4)が2番手から突き抜け、重賞4度目の挑戦で初制覇。2頭を管理する
杉山晴紀調教師(42)は、昨年12月2日にスポニチ賞
ステイヤーズS(
アイアンバローズ)、
チャレンジC(
ベラジオオペラ)を制した
上村洋行師(50)以来、通算17人目(21例目)となる調教師の
JRA重賞レース1日2勝を達成した。
淀を沸かせた
ルガルの圧勝劇から約10分後、今度は東京で
エンペラーワケアが独走のゴール。共に、去年初めて全国リーディングを獲得した杉山晴厩舎の4歳牡馬だ。指揮官は「良かったです。スタートを五分に出てストレスなく良いところで運べた。フットワークが大きいので東京は合うイメージがあった」と重賞連勝に頬を緩ませた。
まさに横綱相撲だった。好発から先行策。主張する馬を先に行かせるさなかに首を上げるしぐさも一瞬見せたが、すぐに折り合った。スッと外に出せば周囲に馬はいない。川田の好エスコートでストレスフリーの道中が実現した。5番手で迎えた直線。懸命に粘る
ヘリオス、
アームズレインに抜群の手応えで並びかける。残り400メートル、鞍上の川田が肩ムチで合図を出してエンジン点火。あっという間に先行勢をかわし独走態勢。後続も追うが、差は広がるばかり。同期の4歳2頭をはるか後方に離し、重賞初挑戦初制覇を飾った。
レモンポップ、
ウシュバテソーロが海外遠征を敢行するなど大航海時代に突入したダート界に待望の新星が誕生だ。
川田はその強さを「一緒に乗りながらも凄く感じていました。前回依頼を頂いて、改めてまたがってみると本当に素晴らしい馬なので重賞に手が届いて当然の馬だなと思います」と絶賛。ダート転向6戦目で一気の相手強化となったが一発回答。「まずは今日しっかり勝ち切れて重賞ウイナーになれたということを褒めてあげたい」とパートナーを笑顔で称えた。
圧倒的なレース内容からさらなる大舞台での期待は膨らむ。杉山晴師は「無理はさせたくないので、まだ次は考えていない。まずはレース後の様子を見てから」とあくまで馬の体調優先で明言は避けたが、
根岸S勝ち馬が近8年で4勝を挙げる
フェブラリーS(2月18日、東京)参戦については「可能性はゼロでない」とした。砂では6戦5勝、2着1回と
パーフェクト連対。あまたの名馬の背中を知る川田が「これから先ますます楽しみな馬」と評する“皇帝”の快進撃はまだ始まったばかりだ。
◆
エンペラーワケア 父
ロードカナロア 母カラズマッチポイント(母の父
カーリン)20年5月2日生まれ 牡4歳 栗東・杉山晴厩舎所属 馬主・草間庸文氏 生産者・北海道日高町の
下河辺牧場 戦績7戦5勝(重賞初勝利) 総獲得賞金9371万6000円 馬名の由来は皇帝(
エンペラー)にハワイの男神ワケア。
◇杉山 晴紀(すぎやま・はるき)1981年(昭56)12月24日生まれ、神奈川県出身の42歳。04年7月に栗東・武宏平厩舎の調教助手になり、稽古をつけていた
スリーロールスで09年
菊花賞制覇。16年に調教師免許を取得、同年10月に開業。18年
目黒記念(
ウインテンダネス)で
JRA重賞初制覇。同年、京都で開催された
JBCクラシック(
ケイティブレイブ)で
JRA・G1初制覇。20年に
デアリングタクトで牝馬3冠を制し、牝馬3冠最年少トレーナーとなった。昨年
JRA55勝でリーディング首位、関西競馬記者クラブ賞を受賞。
JRA通算2404戦259勝(うち重賞19勝)。
スポニチ